2020年度の道内7空港一括民営化を巡り、国と道の主催により9月9日に札幌市内で開催された「空港運営戦略フォーラム」。プログラムは多岐にわたり、予定の4時間を15分延長してすべての日程を終了した。本サイトはこれまで6回のシリーズでフォーラムの詳細を報告してきた。シリーズ最終回は「コンセッションをどう地域活性化につなげるか」をテーマに行われたパネルディスカッションの第2部後半を紹介する。(写真は、コンセッションと地域活性化について議論されたパネルディスカッションの第2部)
パネラーは、稚内市長・工藤広氏、釧路市長・蝦名大也氏、大空町長・山下英二氏、函館市副市長・片岡格氏、ピーチアビエーション副社長・森健明氏、北海道経済連合会専務理事・瀬尾英生氏、前釧路公立大学学長・小磯修二氏の7人で、進行は内閣府大臣補佐官の福田隆之氏。
――地域政策の立場からコンセッションに向けて地域と運営権者に求めることは?
小磯前学長 大事なことは、運営権者のSPC(特定目的会社)がすべてできるわけではないということ。各地域の自治体、経済団体は何ができるのか、その関係作りがこれからの大きな議論ではないか。何を目指すのかを明確にしないとこれからの議論は進まない。訪問者が地域の中で消費をし、その消費が地域の中で循環し、それによって地域の産業が発展していく姿を示していくことだ。
北海道にとって、広域観光振興策は重要なテーマだが、それを民間事業者側が提案していくのは難問だと思う。その場合、空港という公共施設の運営権だけで果たして対応できるのか。また、今回のスキームは30年か、もしくはそれ以上とされている。その間に不測の事態がいろいろと出てくるだろう。SPCの呼び掛けに地域が応えるような関係が確保される仕組みでないとおそらく積極的な投資や思い切った提案に繋がらないだろう。それらを明確にした関係作りを議論することによって北海道にとっても素晴らしい提案が出てくるのではないか。
――空港立地自治体と官民を取り巻く地域の関係者は、現在どんな枠組みで連携しているのか。この連携にSPCをどう巻き込んでいくのか。地域の経済波及に結び付ける仕組みを地域で作ることが大事だが、その観点で取り組んでいることは?
工藤市長 道北は道内2番目の広域観光周遊ルートに国から指定され、推進協議会を設置して交通関係者、自治体を含め取り組んでから2年目に入った。推進協議会の母体は、宗谷観光連盟だが、今後は地域連携DMOを設立して対応したい。
地域振興、活性化に何が必要かという時、「若者、馬鹿者、よそ者」という話があるが、運営権者には違った視点で我々と一緒に汗をかいてもらいたい。
蝦名市長 空港以外の様々な社会資本と連携できればと考えている。北海道には港湾が35あり、釧路港は国際バルク戦略港湾の拠点であり、北方四島に近いことから日ロの共同経済活動特別枠を利用したフライ&クルーズの可能性もある。これら港湾と組み合わせていくといろんなことができるのではないか。
東北海道の中に民間委託空港は釧路、帯広、女満別の3つが入ることになる。東北海道という観点で広域的な取り組みができればと考えている。今は、一つひとつの空港で2次交通をどうするかを考えているが、東北海道という枠で考えた場合、3つの空港の真ん中にあるのが阿寒湖畔。ここに道央圏や東北海道の移動拠点を作ることも良いのではないか。
今までは、行政が民間と組んでも最後は入札による価格で決まってしまうことが多かった。しかし、コンセッションで地域の中に入ってもらえば、行政も一緒になって進んでいける。