昨年暮れ、札幌市西区を走る北5条手稲通の発寒橋たもとにぽっかりと空き地が出現した。バブルの象徴とされた北欧パンの工場兼博物館が解体され、更地になったからだ。土地面積は約810坪。土地所有者は、物販や飲食などサービス産業向けに土地を賃貸する意向だ。IMG_1116(写真は、琴似発寒川沿いのパンの博物館などがあった場所。今は雪で覆われている)

 ここの土地所有者は、根室市の嶋津フローリング工業。元々、同社はここでフローリング材の生産工場を稼働させていたが、安価な外国産に押され工場を閉鎖。その後、1989年11月にパンの北欧がこの土地を賃借して地下1階、地上3階建て(延床面積約1300坪)の本社工場兼パンの博物館をオープンさせた。

 当時の北欧は、地場のパン製造業者として直営店、フランチャイズ店を積極展開、東京や大阪、仙台などにもFC展開を進め急成長していた。バブル期だったため日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行がバックアップして融資、本社工場などもその資金で建設した。

 しかし、バブル崩壊で借入金返済が滞り経営が悪化。長銀と拓銀は破綻し債権は整理回収機構に移ることになる。2000年以降も規模を縮小して経営を継続したが、その間オーナー親子間の経営を巡る争いが表面化。現在は長男が別会社で北欧ブランドを引き継ぎ、暖簾を守るべく5店舗で営業を続けている。数年前から、バブルの象徴とされたこの建物は空きビルになっていた。

 2015年には整理回収機構が建物を競売にかけたが、土地と建物の所有者が違うこともあって競売は不成立。土地所有者の嶋津フローリング工業は、北欧に賃料未払いで建物取り壊しを求める裁判を起こして判決を得たものの、北欧は破綻状態で資金がなく、取り壊すことができなかった。このため、嶋津フローリング工業は昨年9月頃から解体を始め昨年末には取り壊しが終了、更地になった。

 現在、この土地は雪に覆われているが、嶋津フローリング工業は物販・飲食等のサービス産業数社と土地の賃貸交渉を進めている。「雪解けのころには賃貸先が決まりそうだ」(同社関係者)という。バブルの館が消え、今年暮れまでには新たな賑わい拠点が生まれることになりそう。



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