北海道から第2のニトリ、アインを育てようと道内の若手経営者らを集めた「北海道経営未来塾」の第4回公開講座が2日、札幌市中央区のホテルさっぽろ芸文館で開催された。塾生20人に加えて一般の聴衆を交えた約300人がオリックスの宮内義彦シニア・チェアマンの講演を聞いた。IMG_7899(写真は、講演する宮内義彦氏)

 宮内氏は、『新しい価値を創造する企業経営』と題して約1時間講演。1958年に関西学院大を卒業して米国留学、ワシントン大学でMBAを取得後、60年8月に日綿実業(現双日)に入社した宮内氏は、64年に社内ベンチャーとしてスタートしたオリエント・リース(現オリックス)に移る。社員13人、資本金1億円の小さな会社で「下手をしたら潰れるんじゃないか」という緊張感がいつもあった」と言う。 
 80年12月に社長に就任、「経済同友会などに入って社業と関係のない問題を仲間と議論するうちに視野が広くなった。社長になったことで視野は大きく変わったと実感した」と話す。
 
 真面目に一生懸命に社業を務めても、その事業がうまくいくかどうかは分からないと経験から主張、「熱意と専門性を追求しても事業は成功するとは限らない。トップに要求される資質は、深い専門性よりも世の中の動きをどれだけ適格に把握し社業をその動きに沿うように修正できるかどうかだ」と訴えた。
 このことを宮内氏は「正してマクロ観」と名付けている。社会の技術的、社会的、制度的な動きなどを把握して分析する能力こそトップに必要な資質だという訳だ。
 
 60年以降の高度成長から85年のプラザ合意、バブル、失われた20年の間に政府が需要を創出する財政出動で膨らんだ国の借金。宮内氏は「この20年間はイノベーションよりもリストラが企業経営の中心になっている。戦後の廃墟から立ち上がって世界に向けてイノベーションを発信した姿は遠い過去のものになってしまった。企業は社会に新しい価値を提供して経済的果実を社会に提供するものでなければならない。コストカットは社会から見て何の役にも立たない」と何度も繰り返してコストカット経営から離別、第3次産業の生産性を上げるイノベーションなどに活路を求めるべきだと強調した。
 
 講演後は会場からの質問に答える形で、「マイナス金利で金融業は成り立たなくなる。日銀の金融政策が次に向かうのは市場性金融商品、つまり株を買うことしかないのではないか。自由主義経済の政策とは言えずさらに泥沼に一歩踏み出すことになってしまう。20年来の財政・金融政策はとっくに限界にきている」と述べ、政府と日銀の財政・金融政策を批判していた。


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