2020年を目途に新千歳空港を核に道内7空港の民営化を目指す方向が、国や道、7空港を擁する自治体で確認された。焦点のひとつが新千歳空港ターミナルビルを運営する第3セクター、北海道空港(本社・千歳市)の株式問題。民営化された空港を運営するSPC(特別目的会社)の公募に名乗りを上げるには、第3セクターでは資格がないからだ。道や千歳市などが保有する北海道空港株式は果たしてどうなるか。(写真は、新千歳空港)
新千歳空港ターミナルビルを運営する北海道空港は、1961年に設立された第3セクターで、道と千歳市が13・3%ずつ、札幌市が4%を出資している。他に日本航空、ANAホールディングス、フジ・メディア・ホールディングス、北洋銀行、北海道銀行などが出資しており資本金は3億7500万円。
空港民営化は、空港ビルと滑走路などの運営権を民間事業者に売却するものだが、道内7空港の一括民営化に向けて動き始めた中で北海道空港が運営権取得に向けて手を上げるSPCになるのは自然な流れ。
ただ、運営権取得に名乗りを上げるSPCになるには、基本的に第3セクターでは不可とされる。道や千歳市など自治体は、保有する北海道空港株式を売却するか議決権のない優先株に変えるか、何らかの方策を講じなければならない。
5~6年前の1株当たりの純資産額は150万円近くもあったが、最近ではインバウンドの増加で北海道空港の業績は好調のためさらに純資産額は増加している可能性が高い。自治体保有株式をすべて売却すると全体で30%強にもなり、売却先によっては北海道空港の経営戦略にも影響を与えかねない。
想定されるのは、これら自治体株式を複数の道内企業に引き受けてもらいオール北海道の資本体制を作ること。そのうえで大手商社などの出資を募り北海道空港がSPCとなって2000億円とも言われる運営権取得に名乗りを上げる道筋だ。
また、議決権がない代わりに通常の配当よりもプレミアムが付く優先株式に転換する方法も考えられる。この優先株式の配当を、例えば道管理空港の赤字補てんに使うことも可能かもしれない。
2020年に道内7空港の民営化を実現するには、今年中には枠組みを決めなければならず、北海道空港の株式問題も並行して議論することが必要になる。大株主の道と北海道空港の関係は、良好とは言えず互いに瀬踏みしながら本音を探るような危うさを秘めている。国、道、自治体に道内経済界、そして北海道空港が足並みをどう揃えていくかが、空港民営化の肝になる。