札幌商工会議所副会頭として初めて東京駐在となったニトリホールディングス社長似鳥昭雄氏(67)が、北海道と中央の政界・官界を結びつける重要な役割を担っている。当初、札商副会頭として東京駐在を置くことを疑問視する見方もあったが、新幹線問題やTPP(環太平洋経済連携協定)など北海道が直面する課題に橋渡し役として欠かせない存在になっている。(写真は似鳥昭雄副会頭)
ニトリは、5年前に東京本部を新設した。本社は札幌に置いているものの、似鳥社長も東京に拠点を移して事業展開する体制を取った。
ただ、札幌から家具店としてスタートしたことが原点になっているため、東証1部上場企業として年商3100億円を超える全国企業に成長した現在も「北海道への恩返し」が似鳥社長の行動指針になっている。
昨年11月に札商副会頭を引き受けたのも「北海道への恩返し」が念頭にあったからだ。高向巖会頭が強く要請したのも似鳥氏が副会頭就任を受諾する大きな要因になった。
ただ、これまで副会頭はいずれも札幌の経済人が就任しており、東京に本拠を置く経済人が就任するのは初めて。そのため、「在京の副会頭を置くことに意味があるのか」という声も一部には出ていた。
しかし、今年2月似鳥社長の出番が来る。
語るのは札商関係者。
「北海道新幹線の札幌延伸を求める61万人強の署名簿を高向会頭が国交大臣に手渡して陳情することになっていたが、大畠大臣になかなかアポイントが取れなかった。それで似鳥副会頭にお願いしたところ大臣との面会が実現して署名簿を手渡しすることができたのです」
大畠大臣との面会は2月1日。高向会頭や高橋はるみ知事、上田文雄札幌市長など一行29人が大臣と面会し札幌延伸の熱意を直接伝えることができた。
札幌の経済関係者は、「似鳥氏はこれまで政界や官界には距離を置いていると思われていたが、実際はかなり緊
密なパイプを持っているようだ。似鳥氏の働きがあれば、札幌の経済界にも中央の濃い情報が入ってくるだろう」と言う。
高向会頭は似鳥氏のルートから国交省鉄道局長や玄葉光一郎国家戦略担当相(福島3区選出)とも知遇を得たといい、東京の財界人との交流も始まっている。
東日本大震災で北海道ができることは何か――似鳥氏が中央との橋渡し役になることで、これまでとは違う動きが実現できそうだ。