札幌の歓楽街、「すすきの」で繰り広げられた「吉野家」VS「松屋」の牛丼戦争は、昨年12月31日の「吉野家」閉店で「松屋」に軍配が上がった。「松屋」を展開する松屋フーズ(本社・東京都武蔵野市)は、その余勢を駆って同じグループのとんかつ店「松乃屋」を吉野屋の店舗跡に出店する。(写真は、札幌すすきの牛丼戦争で生き残った「松屋すすきの店」)
「吉野家」と「松屋」が隣同士で店を出していたのは、すすきの中心街にある第3グリーンビル1階。片道3車線の国道36号線沿いで、日中でも夜でも人通りは絶えない場所だ。飲む前に食べたり、飲んでから食べたりと楽しみ方は様々。
牛丼2強が並ぶ「すすきの戦争」は、局地戦ながら両社の今後を占う大きな意味を含んでいた。共存共栄といけば万々歳だが、やはりそうはいかない。どちらが優勢になり、どちらかが劣勢になるのは競争社会の掟。しかし、どちらも東証1部上場の企業。やすやすと撤退はできない。緊張状態は何年も続いた。
吉野家は「すすきの店」とは命名せず、「札幌南4条西3丁目店」としていたが、その店がついに撤退したのは、昨年12月31日だった。業種を問わず、すすきので店舗を構えることによって知名度が高まるため、企業にとってはショールームとしての役割も果たしている。それだけに、「吉野家」のすすきの撤退は実態以上にイメージ面でのマイナスは大きい。
ライバル「松屋」は、原因がどうあれ「すすきの牛丼2強対決」に勝利した。ここで畳みかけるように攻撃を仕掛けるのは企業として当然。松屋フーズは、とんかつ業態として展開している「松乃屋」を吉野家が撤退した店舗跡に出店することを決めたのだ。
「松乃屋」は、南5西4の「すすきの店」を4月下旬に移転オープンする。道内では唯一の店舗をすすきのの目立つ場所に移転して、「松乃屋」の来店客増と知名度アップを狙う。「吉野家」撤退跡への出店は、吉野家にとってはさぞ屈辱的なことだろう。吉野家という牛丼の巨象は、すすきので反撃を仕掛けるのだろうか。
なお、札幌市内での店舗数は、吉野家14店舗、松屋12店舗で市内カバー率は吉野家に分がある。企業規模は、吉野家ホールディングス傘下の吉野家は、売上高953億1800万円(2015年2月期)、松屋フーズは、松屋や松乃屋などの業態を含めて811億400万円(15年3月期)。