札幌の目抜き通りと言えば、JR札幌駅から大通までを南北に貫く札幌駅前通。この札幌を代表する通りは、今後の北海道経済を見通した場合、ポテンシャルが残されている唯一と言っても良いほどの街区。来春に開通する駅前通地下歩行空間は、人の流れを変え、北海道の経済にインパクトを与える。札幌駅前通は、北海道の将来を投影する反射鏡になるだろう。
駅前通は、地下歩行空間によって先行的に地下部分の整備が進むが、札幌駅と大通間の往来が増えていけば、地上部分も相乗的に賑わいが生まれてくる。10年のスパンで見ていくと、駅前通に面したビル群の建て替えが加速度的に進んでいくのは間違いない。
駅前通は西3丁目側と西4丁目側では趣が大きく違う。西4丁目側は地場大手の伊藤組やあおぞら銀行、日本生命、札幌グランドホテルなど大規模な建物が大通まで連なっており、ポカンと開いた三井不動産の土地も2年後には帝国ホテルを核テナントにした札幌三井ビルの建設が始まる。
西4丁目側が都会的風情を醸し出しているのとは対照的に、西3丁目側は地場ビル業者が所有する小さなビル群が林立する、“牧歌的”風情が特徴。JR札幌駅から駅前通を見晴るかすと、左右がアンバランスな感じを受け、“東低西高”の落ち着かない印象なのはそんな理由からだ。
西3丁目側のビル群の多くは札幌オリンピック当時に建てられたもので、間もなく更新時期を迎える。駅前通の地区計画は既に策定されているが、それには①建て替え時にはビルを駅前通から現在より2m以上下げる②1階部分は賑わいの用途にする③地下歩行空間と接続する――などが努力項目として盛り込まれており、これらの項目を満たせば容積率が現在の800%から最大で250%まで緩和される。また、西3丁目側のように小さなビル同士が共同でビルの大型化に取り組めば、その場合も容積率の緩和が認められるという。
西3丁目側には耐震性が現在の基準に達していないビルもあり、建て替え機運は徐々に高まっている。越山ビルや若草ビル、スノービルなどが具体化しそうだ。
地下歩行空間の開通は地上部分のビル更新を促し、北海道の未来を形作っていく一歩になりそうだ。
(写真はステラプレイスから見た札幌駅前通)