伊藤元重・東大大学院教授「1億総活躍社会は地域からミクロな変化促す」

経済総合

 日本公認会計士協会北海道会(石若保志会長)は、日本公認会計士協会が特殊法人化して50周年になることを記念した講演会『北海道創生~公認会計士の果たすべき使命』を9日に札幌市内のホテルで開催した。基調講演した東京大学大学院教授で安倍政権誕生から「アベノミクス」に深く関わってきた伊藤元重氏は、「地域が国外からの投資を呼び込み、外国の地域とローカル・トゥー・ローカルで繋がることが地方創生の鍵になる」と述べた。IMG_9004(写真は、講演する伊藤元重氏)

 基調講演のテーマは、『内外経済の変化と地域活性化の戦略』。伊藤氏は、「デフレ脱却はマクロの改革として重要だが、本当の意味で経済の当事者である地域、企業、個人が動くかどうかがもっとも重要。地域主導で地域が元気にならなければいけない。介護や子育てなど個人はいろんな問題に直面しているが、1億総活躍社会とはこうした地域、企業、個人の足下からのミクロの変化を促し草の根で経済を元気にするのが目的」と訴えた。
 
 そのポイントとして、伊藤氏は変化をどう追い風にして地域を活性化させるかを掲げる。TPP(環太平洋経済連携協定)など市場開放、経済のグローバル化は地域経済がテーマになっており、「地域の企業などが外に投資していくとともに外の力をどう地域に取り入れるかが大切だ」と話したうえで、「投資は普通、相互なのに日本は出て行く投資に比べて入ってくる投資が極めて少ない。GDP比で2%程度しかなく、これは北朝鮮よりも低い。ここを何とかしなければならない。東京発で日本をアジアに売りこむ時代は終わった。これからは地域と地域、ローカル・トゥー・ローカルの時代」と強調した。
 その中で観光業は大きなチャンスだとして、他地域と差別化できる観光資源を産業化していくことが地域経済の今後の在り方に大きく影響を及ぼすことを示した。
 
 しかし、変化の中で創造的破壊をある程度受け入れて行かなければならないことも指摘。「人手不足が創造的破壊の一つになるだろう。今後、パート、アルバイト、非正規社員の賃金上昇による強烈な破壊が起こる。2020年には労働力が現在より6%減り人件費は5年間で17%程度上がる可能性がある。そうすると生産性もそれだけ上げないと企業は生き残れない」と語った。そうして生き残った企業は労働生産性を高めた企業だが、日本が成長していくための唯一の方向と示唆し、「ここが地域の経済が元気になる最大のポイントであり日本が大きく変わる転換点になるだろう」と述べた。
 
 また、2025年に団塊の世代が後期高齢者になるため、医療介護、予防医療の負担が絶えてくるのは必至としたうえで、「それを誰が負担するのかというと地域の企業や行政、個人。今でもそうしたことにしっかり対応している地域とそうでない地域があるが、今後は、医療介護や社会資本整備など自治体の公会計をすべて見える化、悪い地域は良い地域を見習って改善していくために自ら動かなければならない」と話した。

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