北海道信用金庫(本店・札幌市中央区)と一般財団法人北海道信用金庫ひまわり財団の主催による経済講演会が16日、札幌市中央区の札幌ビューホテル大通公園で開催された。講師は、東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏。『日本経済の行方』をテーマに約90分間にわたり講演した。(写真は、講演する伊藤元重氏)

 伊藤氏は、20世紀型の経済はモノが増えて量が拡大する時代だったが、21世紀の経済は、『サスティナビリティ』の時代だとし、このキーワードで投資を増やしているのは自動車業界であることを紹介。「2015年に開催されたCOP21で採択された『パリ協定』によって50年までに温室効果ガス発生量を80%削減することが決まった。これではガソリン車は無理。自動車業界は電動化やネットワークと繋ぐコネクティブ化への投資を増やしている。サスティナビリティは企業が生き残るポイントになる」と話した。

 伊藤氏は技術革新にも触れ、米国の大手ディスカウントスーパー、ターゲットに言及。「同社は、自社のカード会員の購買行動が大きく変わる節目は赤ちゃんが生まれる時であることを把握。赤ちゃんが生まれる家族に向けて商品宣伝を強化する戦略を取り入れた。その結果、業績が大きく伸びた」と述べ、顧客の購買データを生かすことの重要性を指摘した。

 また、米国の百貨店であるノードストロームの事例も紹介。「米国の知人から儲かっている百貨店だと聞いたが、行ってみたら客は少なくガラガラ。売り上げが伸びているのはオンラインによるものだとわかった。米国では服のネット通販は返品自由なので、ノードストロームは、顧客がネット注文した30着近くの服を用意、実際に客が試着して選べるようにした。オンラインで注文することとオフラインで試着できることを結び付けたことによって付加価値が出るようになった」と述べ、日本の流通業界もオンライン機能をどこまでリアル店舗のオフライン機能に結び付けられるかがアマゾンとの競争に勝つ条件になると訴えた。

 最後に伊藤氏は、「平成から令和になり、サスティナビリティやIoT技術は経済の大きな流れになる。この流れに沿って、企業がこの5~10年間で貯め込んだ内部留保が動き出せば経済の起爆剤になる。そのことが生活を前に押し出すプラス要因だと確信する企業や人が増えて行けば経済は大きく動くだろう」と結んだ。


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