日経景気討論会が26日午後、札幌市内の札幌パークホテルで開催された。講師として登壇したアークス横山清社長と北洋銀行の石井純二頭取は、道内景気の先行きについて円安で灯油、ガソリンが上昇、さらに電気料金再値上げで楽観できないとして、「個人も企業も地域も格差が急速に進展するだろう」(横山社長)、「底堅い首都圏と地域の格差が広がる」(石井頭取)と述べ、2講師とも格差の拡大が道内景気の不透明要因になる懸念を示した。(写真は、札幌パークホテルで行われた日経景気討論会)
横山社長は、食品スーパー53年の経験から体感で状況は分かるとして、「コメは3月の駆け込み需要の反動減が6月くらいまで続き、7月から本来なら戻ってくるはずなのに戻ってこない。来店客数も減っている。お店に行くとついつい買ってしまうから店に行く回数を減らしている結果ではないか」と述べ、消費者が今後さらにモノの値段は高くなると見て倹約を始めたマインド変化を指摘した。
石井頭取は、昨年7月から道民の実質所得はマイナスになっていることが個人消費の落ちている理由だとして、「デフレ時代の生活防衛の感覚が残っており、次の増税に向けてこの感覚はさらに浸透していき、個人消費の息切れが起きてくる可能性がある」と語り、ガソリン価格が昨年8月に比べて今年8月時点で1ℓ当たり7円上昇、灯油も同9円上昇しているデータを示したうえで「円安のデメリットが地方で進行している」とした。
横山社長は、ハワイで行われた小売業の会合に出席した際に現地のスーパーを視察したことを紹介しながら、「高級品のホールフーズは白人たちでいっぱい、中間層相手のセフエイはガラガラ、ディスカウントのウオルマート系のサムズは有色の人たちで溢れていた。米国では所得が上がらず景気も良くならない中で生活するニューノーマルという生活スタイルが浸透しているというが、日本も同じような状況になっていくのではないか」と見通した。
また、新店建設について「食品スーパーは以前なら外構工事も含めて坪30万円台でできたが、今はその倍。もろに被ればそのコストを商品価格に反映せざるを得ない」と述べ、新店建設よりも居抜きによるリニューアル出店を強化する考えを披露した。
来年10月に予定されている消費税の再増税について、石井頭取は「国の財政を考えるとぶれることなく実施すべき。ただ財政・金融の施策が必要で民間投資を後押しする施策は不可欠だ」と述べた。横山氏も「消費税が2ケタになれば想定外ことが起こるかもしれないがやらざるを得ないだろう。個人的には(食料品に)軽減税率を適用すべきだと考えている」と締めくくった。
討論会には、ニッセイ基礎研究所の斉藤太郎経済調査室長と日本経済研究センター竹内淳主任研究員も講師として登壇した。