北海道観光機構・唐神昌子会長インタビュー「観光の地域偏在、季節偏在を脱す」「宿泊税を基金に」「観光人材の育成」

観光

 ──道議会で議論されている2026年4月から導入予定の法定外目的税である宿泊税についてお聞きします。災害に対する備えとして、基金の創設が必要だと訴えておられる。

 唐神 機構として宿泊税で何をやりたいかというと、まずは、災害時への対応です。2020年からのコロナ禍の4年間は、観光業界にとって思い出したくないほど厳しい状況だったことは、皆さんもご存じのとおりです。給料に充てる雇用調整助成金を6割いただいていましたが、6割では、従業員は生活できません。8割、10割になるよう補填した企業もあったはずです。
 旅館について言えば、統一したマニュアルというものはなく、サービスの仕方は、宿それぞれ多種多様です。そのさじ加減、塩梅をわかっている接遇のプロを手放すことは、自分たちの経営を揺るがすのと同じことでした。お客さまがほぼ消えてしまった中で、こうした接遇のプロたちを手放さずにいたのが、コロナ禍の4年間でした。そのため、劣後ローンの発行やコロナ融資の借り入れをしたところも少なくありません。

 この2年間でインバウンドも戻ってきたので、もう観光は大丈夫だろうという認識は、現実と乖離しています。あの4年間のマイナスを元通りにするには、40年ぐらいはかかるというのが私の実感です。いまだに足元の揺らいでいる業界が、地震や噴火などの大きな災害に襲われたら、いったいどうなるでしょうか。
 ここで大事なのは、被災地以外の安全宣言なんです。一番被害を受けたところはともかく、そうではない地域に関しては、いち早く安全性を伝えてお客さまに戻って来てもらう。それを1分1秒でも早くする。そのためにも基金が必要なのです。

 ──まず基金だということですね。法定外目的税ですが、観光に関するインフラ整備にも充てると規定すると、解釈が広くなってしまう。

 唐神 例えば自治体の道路を「観光道路だ」と言えばそこに使えますし、消防設備や道路などの表示もそうです。宿泊税を一般財源と同じように扱うと、使途が不明確になってしまいます。

 ──観光はなくてはならない産業で経済波及効果が非常に大きいですが、自然災害やパンデミックのようなリスクの影響を受けやすい。

 唐神 道内の総観光消費額は、2024年度で1兆5923億円にものぼり、まさに北海道経済の屋台骨と言える産業になっています。その反面でご指摘のようなリスクもある。北海道は、本州でいうと青森から埼玉の大宮ぐらいまでカバーする広さがあります。東北の温泉が災害で被害を受けたとしても、それ以外の北関東などの温泉地は、お客さまを受け入れることができます。ところが、北海道は、洞爺湖が被害を受けたら、知床までダメージを受けたと受け止められがちです。

 噴火や地震が起きた時に、ダメージを受けた地域とそうでない安全な地域を、国内外にしっかりと発信をしなければ、北海道全域が影響を受けてしまう。こういう安全宣言の発信には、一つの地域で数千万円単位のコストが必要です。メディアを使った告知をはじめ、本当にお金がかかります。しかし、そうした資金を投入することによって、お客さまは戻ってきます。

 ──しっかり地域を切り分けた安全宣言が必要だと。

 唐神 そうしなければ風評被害が蔓延し、被害をさほど受けていないところもお客さまを逃してしまう。こういう事態を防ぐための基金です。こうした使い方は、機構の特別顧問に就任された前観光庁長官の秡川直也さんも「すごく真っ当な考え」と賛同してくれています。基金は、こうした宿泊事業の支援に加え、お客さまの安全・安心、地域や関係者支援にも活用できると考えています。

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