アクティビティを通じて、自然や異文化を体験するアドベンチャートラベル(以下、AT)の世界的組織、アドベンチャートラベル・トレードアソシエーション(以下、ATTA)が主催する「アドベンチャートラベル・ワールドサミット2023(以下、ATWS2023)」が、2023年9月11日から北海道を舞台に同月14日まで4日間、アジアで初開催されている。9月12日には、札幌市白石区の札幌コンベンションセンターでオープニングセレモニーや分科会などが行われ、北海道観光PRキャラクター、キュンちゃんがラジオ体操を披露して、会場を盛り上げた。(写真は、ラジオ体操を壇上で披露するキュンちゃん)
(写真は、記者会見した面々。左からATWS北海道実行委員会幹事・国土交通省北海道運輸局観光部長水口猛氏、ATWS北海道実行委員会筆頭副会長で北海道観光振興機構会長の小金澤健司氏、ATTAのCEO、シャノン・ストーウェル氏、ATTAアジア太平洋ディレクターのハンナ・ピアソン氏)

 ATWSは、ATTAが主催して2005年のシアトルから始まったATの世界的なトレードショー。毎回、世界各国から政府関係機関や経済団体、旅行会社など800人近くが集まり、開催国でのATの可能性について議論したり、新たな旅行商品の開発などを通じ、ATの普及促進を目指している。
 2021年には北海道でのATWSの開催が予定されていたが、コロナ禍でバーチャル開催となり、規模が大幅に縮小された。その後、ATTAと日本側のATWS2023実行委員会が協議を続け、実開催に繋げた。今大会には、64の国・地域から約750人が参加、実際にATのコースを体験するデモツアーには31コースが用意され、約600人がそれぞれのコースに分かれて参加した。

 12日のオープンニングセレモニー後にATTAのCEO、シャノン・ストーウェル氏やATWS北海道実行委員会筆頭副会長で北海道観光振興機構会長の小金澤健司氏らが記者会見して、北海道でのATの可能性について話した。小金澤氏は、「アメリカで生まれたATが、世界で大きく広がり、今回、アジア初のサミットの実地開催となった。記念すべきサミットが、北海道で開催される意義は大変大きい。独自の文化や食の豊かさから、北海道はポテンシャルが高いと言われてきたが、ポテンシャルだけで終わらせてはいけない。北海道観光をもっと大きな産業に育てることができると信じている。『ATWS2023』の開催が、その大きな契機となると考えている」と話した。

 ストーウェル氏は、「北海道には、アドベンチャートラベルにとって重要な3つの要素である自然、文化、アクティビティが揃っており、ATの多様さと質が保証されている。野生生物やアイヌ文化への理解、サイクリング、トレッキング、ラフティング、カヤック、バードウォッチングなど、枚挙にいとまがないほどのアクティビティがあり、今回も世界中から訪れた多くの参加者を楽しませた」と語った。そのうえで、「ATは、旅の持続可能性を追求し、オーバーツーリズムなど旅の悪影響を最小限に抑えることに重点を置いている。ATの旅行者が使うお金の65%から70%が地元に残るが、マスツーリズムで訪れる団体客の場合は、現地に残るのは10-15%と言わている。ATははるかに多くのお金を地元に残す」とAT受け入れ先の活性化に繋がることを指摘した。

 ATWS北海道実行委員会幹事で国土交通省北海道運輸局観光部長水口猛氏は、「2021年の北海道開催がバーチャルになったが、ストーウェルCEOから『楽しいだけのイベントなら開催する意味はないよ』と忠告された。サミットが、参加者たちにとってビジネスの場として成立するようにATTAの高い要求に応えながら会議の準備をしてきた。旅行品質の向上や満足度の向上に努めていくことが、今後アジアの中で北海道のアドバンテージになることを期待している。世界のネットワークと繋がっていくことが、日本のATを発展させる鍵になる」と語った。

 さらにストーウェル氏は、「英語を話せるガイドが増えれば、北海道のATの旅行造成はさらに増えていくだろう。また、ATを楽しむ人たちは、日本の文化を体験するために来ているので、日本らしさを薄めてはいけない。日本文化はATにアピールするものなので、しっかりと守っていくことが大事だ」と示した。

「ATWS2023」の開催をどう生かしていくかについて、小金澤氏は「ATWSは、競争の場ではなく協力、連携の場という手応えを感じている。北海道には、ヨーロッパ、アメリカからのツーリストはそれほど多くない。ATWSは北海道を認知してもらういい機会であり、スタートの時だと思う。今後、ATWSが開催された北海道ということを、いかにプロモーションしていくかが私たちの課題」と気を引き締めていた。



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