ーーコロナ禍でも、ニセコエリアでは建設ラッシュが続いています。
吉田 コロナに関係なく堅調に投資は続いています。外資はポストコロナを睨んでいると感じます。
ーーオーストラリアや米国資本の投資は少なくなってきましたね。
吉田 香港系のいわゆる華僑系の投資が増えています。ニセコ地区の投資の内訳は、香港7割、シンガポール2割、1割がその他というイメージです。特徴的なことの一つに、韓国のハンファグループが初めてニセコ地区に入ってきました。リスクヘッジの面では、さまざまな国からの資本投資は良いと思います。海外の観光客が分散するからです。
ーー2019年の頃から華僑系の投資が増えて、中国本土からのスキー客も増えていました。アフターコロナもその傾向が続きそうでしょうか。
吉田 中国本土からの観光客はアフターコロナになっても増えると思います。その他にも、今は運休していますがフィンエアーの就航で、ヨーロッパの人たちも増えていたところでした。コロナ明けには、再びヨーロッパからのお客が伸びてくると思います。北米、カナダからも堅調に観光客が来ていたので、ポストコロナのニセコは、中国系一辺倒にはならないと思います。
ーー開発資本は、華僑系が増えてくるのは間違いないですか。
吉田 そうですね。資金力が旺盛ですから。ただ、開発の主体が東京にある香港、シンガポールの日本法人になってきたので、地場業者が関連する仕事を受注できなくなってきています。不動産販売でも国内大手などが乗り出してきましたから、地場の不動産会社の仕事が減りつつあります。今までこの地区の発展を支えてきたのは地場業者でしたが、流れは東京資本に移っていくのではないか。地元業者の持続可能性を図るためにも何か方策がないかと思います。
ーー町は今年から2年をかけて景観条例の適用地区を拡大していく考えです。
吉田 景観条例の適用地区ではないところが結構あったので、今回は花園と樺山の2つの地区に適用できるように町が動いています。コロナに関係なく、ベッド数の上限も目標値に入れる予定で、現在の1万800床を1万8000床で抑える予定ですが、合理的だと思う。上水道、下水道の整備負担が莫大なので、どこかで防波堤を造らないといけない。町民の意見を聞くと、「これ以上の森林開発はやめてほしい」という声が年々高まっています。観光協会内には、推進派も反対派もいますから、協会としての意見は集約しては出しませんので、町の判断に従うだけです。
ヒラフ地区で温泉を掘削できるのは、あと2年だけです。新規の掘削ははもう認めていません。掘削できるのは、以前に許可を取っていたものだけ。ニセコエリアの開発の中心は、花園地区に移っていくと思います。町が考えているのは、大型のコンドミニアムをこれ以上建設できないようにして、別荘地型開発へシフトさせようという考えです。より景観に配慮して、自然の中にあまり巨大なものは造らない方向でしょう。
ーー今冬のシーズンへの期待度は。
吉田 ワクチンパスポートなどの対応をぜひ検討してもらいたい。国や道は、観光客が入ってくることができるような施策を取ってほしい。
ーーコロナ禍のダメージは大きく、回復までに様々な課題があると思います。
吉田 コロナの収束が見通せるようになった段階で、解雇した人たちをどうこの地区に戻すかという課題があります。海外からの働き手をスムーズに入国させることも課題になるでしょう。なにせ海外の働き手は、冬場で2000人を超えます。スキーインストラクターやホテルマンなどさまざまですが、この地区ではインストラクターが非常に多いのが特徴です。
町の人口は、約1万5000人なので冬には1万7000人くらいまで人口が増えます。2000人の経済波及効果は大きい。現在、定住者と帰らずに残っている外国人は合わせて約700人います。アフターコロナでも観光客は一気には戻ってこないでしょうけれど、1人でも多くの外国人がこちらで働けるような環境を整えてほしいと願っています。