倶知安観光協会・吉田聡代表理事インタビュー「コロナ禍2年、北海道ニセコの今とこれから」

観光

 オーストラリアや東南アジアをはじめ、海外投資で世界のリゾートに向け成長を続けていた北海道ニセコエリア(倶知安町)。新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンドや国内観光客の入り込みがほぼなくなり、出口の見えない状態にある。そんな中でも建設投資は落ち込むことなく続き、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた動きは続いている。コロナに喘ぐニセコは、今どうなっているのかーー一般社団法人倶知安観光協会の吉田聡代表理事(53、司法書士法人ミナカムイ代表)に現状とこれからを聞いた。(よしだ・さとし…虻田郡倶知安町出身、函館ラサール高校、中央大学法学部卒。92年に司法書士試験に合格し93年に札幌で開業。99年から1年間カナダ・バンクーバーに留学、2000年に倶知安で司法書士事務所を開設、現在は札幌、富良野にも事務所を持つ。16年5月から倶知安観光協会代表理事)

 ーーコロナ禍から1年半が経ちましたが、影響は深刻ですね。

 吉田 昨年は、3月までインバウンドも来ていましたが、それ以降、本当に切ない状況が続いています。町の商店のほかホテル、コンドミニアム向けのリネン関係、ベッドメイクなどで働いていた主婦の人たちの仕事も全部なくなってしまいました。
 それでも昨年は、GoToトラベルの効果もあってお客が戻ってきた時期もあって少しは良くなりましたが、その後も感染拡大が続き、クラスター発生などでお客はどんどん減っていきました。皮肉にも、昨シーズンの冬は最高の雪質で、後年の伝説になりそうなくらいに雪が降りました。土日は、国内客や道内客である程度は潤いましたが、平日は厳しかった。
 ニセコ地区の飲食店の売り上げは、2019年に比べると8割~9割減になったままです。21年の冬は、少しでも良いのでインバウンドが来られるようにしてもらいたいのが本音です。ワクチンパスポートなど証明書関係によって、段階的に隔離なしでも来られるようにしてもらえればと思います。

 ーー観光協会は、コロナ感染者が発生した飲食店の店名を公表するようにしましたね。

 吉田 当観光協会の理事には、外国人理事もかなりいます。彼らの母国では公表は当たり前。「日本はなぜ隠すのか」ということになって、理事たちと話し合った結果、その店が望めば店名を公表しようということになりました。全会一致ですんなりと決まりました。コロナに対する考え方が、外国と日本とでは全く違うことがあります。倶知安には外国人経営者が多く、彼らと商売をしている日本人も多いので、この地区では考え方がある程度、外国流にカスタマイズされています。そのことによって、少なからず効果的な施策を打てたと思います。コロナ感染者が発生した店名の公表に賛同してくれたお店は、地域のことを考えてくれた結果だと思います。地域にとって公表した方が、透明性がより高まるという合理的な考え方が浸透したことは良かったと思う。

 ーー観光協会としてのコロナ対応策にはどんなものがありましたか。

 吉田 打てる手立ては、ほぼありませんから、我々でできることを粛々とやるしかありません。松明滑走や太鼓演奏など例年の行事をほぼ全部取りやめました。それくらいしか対応できません。協会が音頭を取ってワクチンの集団接種を行いました。道内の集団接種としては、比較的早かったと思います。会場は、花園の「ニセコHANAZONOリゾート」を使いましたが、香港のオーナーの理解もあってトントン拍子で使えるようになったのは良かったと思います。

 ーーコロナ禍を通して、観光協会の会員からはどんな声が出ていますか。

 吉田 飲食店が困窮しているのは、みんな分かっているので、後志総合振興局などが中心になって町内の飲食事業者に弁当を優先発注して支えました。商工会議所や役場も協力して情報を共有しました。それくらいのことしかできなかったのが実情です。

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