札幌駅前通に進出を検討していた日本のホテル御三家のひとつ、帝国ホテルが札幌進出を白紙に戻した模様だ。ホテル関係者によると、帝国ホテルは1月末に札幌進出しないことを明らかにしたという。東日本大震災が直接のきっかけではなく、いわゆるホテルの北海道価格では帝国のサービスが提供できないのが理由とされている。(写真は、帝国ホテルがキーテナントとされていた札幌三井ビル建設予定地)
帝国ホテルは、三井不動産が2014年に開業する札幌駅前通の札幌三井ビルのキーテナントとして誘致されることになっていたが、進出断念ということになれば札幌三井ビルの建設は根本から見直されることになる。
三井不動産が建設を計画しているビルは、地上36階建て高さ185㍍で高級ホテルをキーテナントにしたオフィスとの複合ビル。高級ホテルとして当初は、米国のマリオット・インターナショナルが検討されたがリーマンショックで白紙になった経緯がある。
次に白羽の矢がたったのが帝国ホテル。帝国ホテルは三井不動産が大株主で、昨年9月には進出の検討をはじめ新聞各紙も報道、帝国進出はほぼ確実と見られていた。
札幌のホテル市場は、オンシーズンとオフシーズンの利用客の落差が激しく、オフシーズンになると客室稼働率は極端に低下する。全国の主要都市やリゾート地でも、これほどの落差のある土地はなく、オフシーズンにいかに利用客を増やすかが札幌ホテル市場の永遠の課題と言っても良い。
かつて、札幌のホテル市場で高級路線を導入すると表明したホテルは「ホテルアルファ」「ルネッサンスホテル」「ロイトン」があったが、ホテルアルファは自己破産しホテルオークラが承継したものの高級路線は実現していない。
ルネッサンスホテルも頓挫し現在は別法人化、ロイトンも当初のエージェントを頼らないコンベンション路線を軌道修正、高級化とは距離を置いている。
帝国ホテルは、1泊4~5万円で富裕層を呼び込む高級化で札幌進出を検討していたが、この価格帯では市場が広がらず採算を見込むのは難しいと判断したようだ。
札幌市内のホテル関係者は、「帝国進出は札幌のホテル市場にとって歓迎すべきものだった。一流のサービスやそれに見合った価格など、既存のホテルが刺激を受け、より良いサービスの提供を競い合うきっかけになるからだ。帝国の進出が白紙になったとすれば大変残念。ただ、帝国がホテルの北海道価格に合わせてサービスを落とせばブランドそのものが揺らぐ。その意味では帝国らしい決断だったのではないか」と語っている。