北海道経済部観光局国際観光担当局長の竹谷千里氏が22日、札幌学院大学で「北海道観光の現状と課題」と題し特別講義を行った。竹谷氏は、東日本大震災で北海道観光が落ち込んでいることを報告、これ以上の落ち込みは地域経済に大きな影響を与えるとして、「北海道観光の『今』を救う『道民による道内旅行』を」と強く訴えた。(写真は、講義を行う竹谷千里氏)


道内観光は震災後から6月末までの3ヵ月間で800億円の減収になると予測されており、回復への即効薬は望み薄。被災地への応援・支援を絡めた息の長い観光復興キャンペーンで道民の一体感を醸成していくことが不可欠なようだ。
竹谷氏は、過去半世紀の北海道観光を振り返って、外国人を含む道外観光客数の推移は日本のその時々の社会・経済情勢を敏感に反映していることを紹介。
石油ショックやバブル崩壊、有珠山噴火、リーマンショック、新型インフルエンザの猛威などが起こるたびに踊り場になって落ち込み、数年で回復というパターンを辿っている。
竹谷氏は、「観光産業は社会の影響を反映するフラジャイル(脆い、虚弱な、壊れやすい)な産業」と指摘した。
外国人観光客は1997年の12万人から2007年度には71万人と10年間で6倍に拡大したが、「伸びを牽引したのは台湾と韓国。台湾では台湾国内のジェットテレビという民間放送局が北海道キャンペーンを毎週放映して当時の道内212市町村の普段の生活の姿を紹介し続けたのが大きい。また、韓国は小樽を舞台にした日本映画『ラブレター』が韓国で公開されて小樽ブームに火が付いた」(竹谷氏)と分析した。
2年半前には中国で道東を舞台にした『フェイチェンウーラォ』が大ヒットしたことで中国人観光客が激増するなど、竹谷氏は外国人観光客の入り込み像には映像による効果が極めて大きいことを紹介した。
今後の北海道観光のあり方として、竹谷氏はMICE(企業等の会議、企業等の報奨・研修旅行、国際会議、イベント・展示会)のほか、北海道の自然や農業、漁業などの体験型観光を挙げた。
しかし、東日本大震災による観光への影響は、かつて北海道が経験してきた落ち込みよりも深く長い可能性がある。処方箋がなく手探りで回復ヘの道筋を探っていくしかないのが現状だ。
竹谷氏は、「道外客、外国人観光客が夏までに回復するとは期待できない。そんなときこそ道民が道内を回って見て欲しい。私たちが普段と同じように生活し、旅行し、地域のイベントに参加することが元気な北海道を支え被災地を支えることにもつながる」と述べた。
観光消費を盛り上げることは大事だが、観光で自然や地域の人々と触れ合うコンテンツを深化させる行政サイドのアプローチが必要だろう。

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