旅行やビジネスの新しい宿泊スタイルとして世界的に人気が高まっている空き家や空き部屋を利用したシェアリングサービス。そのサービスを世界的規模で行っているairbnb(エア・ビー・アンド・ビー)の日本法人代表取締役、田邊泰之氏(44)が国内での広がりの可能性について札幌市内で講演した。IMG_9840(写真は、講演するairbnb Japanの田邊泰之代表取締役。スクリーンに映っているのは創業者の3人)

 キャリアバンクやエコミックなどの上場企業を有するSATOグループが17日に開催したオープンセミナーで講演したもので、まずairbnbが2008年にサンフランシスコで創業した経緯について紹介。
 アート系の学生だった創業者の1人であるブライアン・チェスキーなど3人は、家賃も払えずお金に苦労していたが、ある時旅行者たちが宿がなくて困っていることを耳にして自分の住んでいる部屋なら3人は泊まれることを簡単なブログを作って紹介。数日後に米国人2人、インド人1人から問い合わせがあって泊めることに。ごく普通の部屋でベッドもないところ。間に合わせのエアーマットのベッドと朝食(ブレックファスト)のサービス、地元の観光案内をすることにしたが、泊った側は地元のアート系学生がサンフランシスコを案内してくれたことで普段との全く違うサンフランシスコを知ることができたと大いに感動。泊めたチェスキーらも楽しい思い出となった。「宿を提供しなかったら会うこともない人たちがお互いに楽しく過ごすことができた。その時の双方の感動がairbnbの原点になった」(田邊氏)
 
 社名のairbnbは、エアーマットのベッドとブレックファストをもじったものだ。その後は、米国ニューヨークなどに広がり2012年には欧州、14年からはアジアにもairbnbのシェアリングサービスが広まった。
 現在、世界190ヵ国以上でこのサービスが使われ登録物件数(宿として提供されている家や部屋)は200万件、3万4千の都市・地域で利用できる。08年に初めてこのサービスを利用したのは3人だったが、現在の累計数は6000万人。この夏だけで1700万人がairbnbを利用、この数字は実にスイス一国の人口に匹敵する。
 
 日本の登録物件数は2万1千件で利用者は前年比529%と驚異的な増加。これほど普及した理由として田邊氏は「ゲスト(泊る人)は地元の生活を体験したい人が大半。地元に溶け込むことができ、通常の観光とは違う体験ができること。また、簡単に申し込めるようにユーザビリティ(使い勝手)を良くしていることも挙げられるのではないか」としている。
 
 利用者はあらかじめメールアドレスや電話番号、パスポートや免許証番号、プロフィールなど個人情報を登録して置かなければならない。airbnbを利用したら泊った側も泊めた側もそれぞれの印象をレビューとして書き込み、部屋が汚いとか使い方が乱暴など、それぞれの印象が悪ければその評判によって次の利用が左右される。「最初に利用する場合はレビューがないのでなかなかホスト(宿の提供者)がOKしてくれないこともある。私も最初は6件に断られて7件目でようやく泊ることができた。今はこれまで利用したレビューがたくさん蓄積されているのですぐに利用できる」(田邊氏)
 悪意のあるホストやゲストがいないかどうか、airbnbでは常時250人がサイトを監視しているという。ホストの部屋の物損事故やゲストが怪我などをした場合、最大で1億円まで補償する保険も用意している。
 
 田邊氏は、世界のユニークなホスト物件としてロンドンの城、インドの宮殿、ツリーハウス、灯台などを紹介、日本では高野山の宿坊、徳島県の古民家などを披露。岡山県では高齢者たちが宿泊者のおもてなしをするグループを結成、外国人ゲストから大いに喜ばれていることも話した。
「子供たちが大きくなって出て行った後の空いている部屋を貸したい時に貸して収入を得たり、地方にある空き家など眠っている資源の活用にも繋がる。また利用することによって週末だけ地方に住むなどライフスタイルを変えることもできる。ホスト、ゲストに新しい発見があるのがairbnbの真骨頂だ」と田邊氏は締め括った。



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