上海の上海豫園旅游商城は、上川管内占冠村のリゾート、「星野リゾート・トマム」を183億円で買収する。施設の運営は今まで通り星野リゾート(長野県軽井沢町)が続ける。星野リゾート・トマムは、米系ファンド80%、星野リゾートが20%の株式を保有しているが、全株を上海豫園旅游商城の日本法人が12月1日付で取得する。(写真は、中国資本が取得する星野リゾート・トマム=2014年12月末撮影)
星野リゾート・トマムは、スキー場、ホテル、ゴルフ場がある道内有数のリゾート。同社は、土地と建物を所有しているが、占冠村も一部の土地と建物を所有している。占冠村の所有分は今回の中国資本の買収対象ではない。リニューアル投資など、村と中国資本の意思疎通が必要な場面が出てくることも予想され、村所有分の売却が浮上する可能性もある。
星野リゾート・トマムは、仙台の関兵精麦が旧北海道開発庁の後押しなどを受けて1983年に開業したアルファリゾート・トマムが前身。関兵精麦とアルファコーポレーションが国有地や村有地などを除く土地建物を所有、運営はアルファコーポレーションが担い、札幌市内でホテルオークラの協力を得て開業したホテルアルファとともに80年代後半から90年代後半まで道内のリゾート観光の一世を風靡した。
98年にアルファコーポレーションが自己破産して運営が加森観光に引き継がれ、施設は占冠村が所有することになった。その後、2003年に関兵精麦が民事再生法を申請、星野リゾートが関兵精麦の所有していた施設を取得して運営に入り、一時は、道内の加森観光と長野の星野リゾートがトマムを運営する体制だったが、05年から星野リゾートに一本化され11年には名称も星野リゾート・トマムに変わった。
道内のリゾート地は、かつて東急と西武(コクド)が双璧として開発が進み、バブル期にトマムと洞爺湖畔に建つエイペックスリゾート洞爺(現ザ・ウィンザーホテル洞爺)、ルスツリゾートなどが開発された。そのうちトマムとエイペックスはバブル崩壊で共に破綻、ルスツは中小企業経営に徹している加森観光の柔軟な“名を捨て実を取る”経営が奏功、現在も加森観光が主導権を握っている。エイペックスは、セコムを経て現在は明治海運が所有運営している。
道内リゾートは、どこも資本の変遷が激しく、かつての東急・西武に代わるのが中国系資本という見方もできる。リゾート観光地として地元はフローのマネーで潤うが、長期的に見ればストックのマネーとして流出していく。中国系資本の進出をどう取り込んで道内経済の厚みにしていくか、知恵が必要になる。