北海道ファシリティマネジメント協会(HFMA)は一般社団法人に移行して以降、初の指定管理者セミナーを札幌市西区の「ちえりあ(札幌市生涯学習センター)」6階講堂で開催した。講師は総務省自治行政局行政経営支援室長の小川康則氏(45)でテーマは、『ファシリティマネジメントと指定管理者制度』。地方行革推進の目的で2003年から全国の自治体で導入が始まった指定管理者制度だが、10年が経過して見えてきた課題などについて言及した。道や札幌市など行政を含め協会員など約150人が参加した。(写真は24日に行われたセミナーで講演する小川康則氏)
 
 指定管理者制度は、公共施設の維持管理、運用を企業やNPO、一般社団法人、公益法人などに委託する制度で、公務員削減や財政支出減など地方行革の一環であるとともに公共施設を利用する地域住民の利便性を確保していく目的がある。
 
 学校や公営住宅など人口増大期に数多く建設した公共施設は、06年から始まった人口減社会の到来で、作る時代から減らす時代へ大きく転換。こうした時代環境下で地域の公共施設をマネジメントしていく行政には、民間とともに如何に長持ちさせながら快適な利用を促していくかが求められており、ファシリティマネジメント(FM)と指定管理者制度は自治体にとって避けて通れない選択になっている。
 
 小川氏は、現在全国の自治体で指定管理者制度を導入しているのは約7万3000件に及ぶとし、昨年12月に公表した指定管理者導入調査の内容を説明。「この調査は3年に一度実施しているが、指定管理者になっているのは民間が3割を占め、前回調査より3・9ポイント増加している。制度導入当初は3年更新を指導していたが、『人が育たない』、『安いコストでは官制ワーキングプアを引き起こす』など課題が出てきたので10年には施設に応じた指定管理の期間とするように指導したところ、指定管理の平均期間は5年間というのが半分になった」と述べた。
 
 小川氏は指定管理者制度のモデルケースとして東京都が所有する青山斎場について紹介し、「あそこは日比谷花壇が指定管理者になり見違えるほど使い勝手の良い斎場になった」と民間活力の利用が公共施設の利便性向上に繋がるケースが多いとした。
 
 また、安倍政権が前のめりで進めている民間活力を利用して社会資本を整備するPFIについて、「PFIと指定管理者制度の2本立てで税制上の特典などがあれば期待できる公共整備の手法になる。アベノミクスでその機運は高まり始めている」と語った。
 
 講演後には参加者から「指定管理の期間が8~10年に及ぶ可能性はあるのか」という質問や「価格競争による入札ではなく施設に応じた評価基準が必要ではないか」という声が出て、小川氏は「指定管理期間は長期化のトレンドにあるが、施設を渡しきりにするようなことには抵抗がある。いくつかの期限に区切ってということになるだろう。また、安くて高いサービスというのは現実にはありえない。指定管理者制度のブラックボックスをそのままにせず行政側もリスク管理マネジメント能力を高めて舵を切っていくことが大切」と答えた。


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