社団法人北海道ファシリティマネジメント協会(山口博司会長)と地方独立行政法人北海道立総合研究機構北方建築総合研究所(瀧田裕道所長)は5日、旭川市緑ヶ丘の同研究所で「今こそ経営にファシリティマネジメント~旭川FMセミナー」を共催した。企業・団体の設計設備関係者や需要家である自治体や病院関係者など約80人が出席、研究所の視察などともに最新のFMの動向が報告された。(写真は、坂本春生氏=左と檜森聖一氏)
 
 北方建築総合研究所の視察では、同研究所が自然換気や昼光の利用、氷や雪を利用した冷房など環境負荷低減の技術が説明され、電気料金は同様の建物に較べて9割も削減されていることやトータルエネルギー利用は同規模のオフィスビルに較べて43%削減されていることが紹介された。
 
 また、人工的に厳しい自然環境を作り出して住居などに使われる材料の劣化を調べる試験装置、サイディングの水漏れや耐久性を調べる水密気密性試験装置などの視察も行われた。
 
 セミナーでは、同研究所の環境科学部構法材料グループ研究主幹の吉野利幸氏が「市町村建築物の計画的保全支援ツール開発」について紹介。この支援ツールは、市町村が保有する施設や建物の劣化状況を記録して保全計画をトータルに調整していくもので、少ないコストでいかに施設の利便性を高め、利用者である住民ニーズやサービスの向上を実現していく支援になるという。
 
 吉野氏は、「市町村では最低限どのくらいの建物施設があって、個々にどういう状況かを担当者だけでなくトップも含めて共通認識をすることが大事」と述べ、「人口減少が進む自治体の公共施設の建設と運用には、FMが不可欠」と強調していた。
 
 続いて、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会の坂本春生会長が講演。坂本氏は、「施設や建物を使っている需要家サイドがFMの考え方を理解して採用していくことが大切。FMは社会の常識語にならなければならない。土地や施設、ユーティリティ、オフィス環境などファシリティへの考え方が変われば、そこで働く人や利用する人の考えが変わり、企業の文化や地域住民の文化そのものも変わるだろう」と語り、「ファシリティのコストを10%下げたら売上げは20%増えるだろう」とFM導入の経営効果を訴えた。
 
 閉会挨拶で北海道ファシリティマネジメント協会の檜森聖一理事(北海道二十一世紀総合研究所社長)は、「40年間銀行で務めてきたが、銀行の経営指導は『社長の給料が高いのでは』とか『社員を減らせばいかがですか』『(資産を)売ったらどうですか』というものが中心だった。坂本会長の話を聞いて少し恥ずかしい思いがした。今後、FMの導入、推進、啓蒙に取り組んでいきたい」と結んだ。


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