一般社団法人北海道ファシリティマネジメント協会(HFMA)は19日、「2015年特別講演会」を札幌市北区の札幌エルプラザ3階ホールで開催した。「地方創生と地方財政のファシリティマネジメント」、「未来志向の学校施設づくり」の2講演が行われ、道内市町村の教育委員会関係者ら約300人が参加した。IMG_5097(写真は、講演する多田健一郎氏)
IMG_5104(新保幸一氏は学校施設の長寿命化改修について講演)

 最初の講演は、「地方創生と地方財政のファシリティマネジメント」。講師は元道副知事で地方公共団体金融機構経営企画部長の多田健一郎氏。過去に建設された公共施設が今後、大量に更新時期を迎える一方で、地方公共団体の財政は依然として厳しい状況という背景がある中、国は地方公共団体が公共施設全体を把握し長期的視点に立って総合的・計画的な管理を行う「公共施設等総合管理計画」の策定を促進している。
 
 多田氏は「大枠を固めて現状を直視し常にローリングしながら個別の整備計画を立てることが必要で、この計画は来年度までには都道府県と政令市はすべて策定が完了し全国1721市町村は98・4%の自治体が策定を終えるだろう」と説明した。
 
 また、地方が自立を考え責任を持って遂行していくための地方版総合戦略を策定するに当たっては、「自治体同士の連携、民間との連携を意識して取り組むことが必要だ」と強調した。
 
 続く講演は「未来志向の学校施設づくり~学校施設のファシリティマネジメント(FM)長寿命化対策」がテーマ。講師は文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官の新保幸一氏。新保氏は公立小中学校で老朽化が進行している建築後25年以上の要改修施設が全体の7割を占め、「耐震補強は95%まで対応できているが、それ以外の改修をきちんとしている施設は少ない」と語った。また、「小中学校は全国で約3万校ある。その中で外壁や手すりの落下、窓枠の脱落など安全面の不具合は年間約1万4000件もある。2校に1校は安全面に不安があり、かなり深刻な状態」とも述べた。
 
 文科省は2年前から急増する老朽化施設に対して従来の改築(建て替えること)中心の考えから長寿命化を図る改修に転換しており、「建築後20~60年の間に手を入れて長寿命化改修をすれば建て替えと同じ水準になる。これ以上、学校施設が増えない中で既存施設は機能を高める改修の時代に入っている」と述べた。 
 
 新保氏は、長寿命化改修の先進事例として黒松内町立黒松内小学校を紹介、「建物の省エネ機能を高める改修などはそのまま児童の教材になる」と副次的な効果も訴えていた。


この記事は参考になりましたか?