部員減少で逆境の公立高校柔道部、 たった2人の部員で全道大会出場決めた札幌稲雲高の「快挙」

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IMG_0362IMG_0347 公立高校の柔道部はどこも部員の確保もままならず存続さえ危ぶまれる状況が続いているが、道立札幌稲雲(とううん)高校(札幌市手稲区)柔道部は2人の部員のうち1人が昨年11月の札幌地区新人戦を勝ち抜き、1月28日から行われる全道大会に出場する。札幌地区は、伝統ある私立の強豪校が強く、部員が減る一方の公立校から全道大会に出するのは難しい。稲雲高柔道部はこの狭き門を突破、晴れの舞台での活躍が期待されている。(写真左は札幌稲雲高校柔道部の2人。左から1年生の豊田直洋君、2年生の加藤光城君と監督の助川貢教諭。写真右は2人での乱取り練習)
 
 稲雲高は、今年で創立30年を迎えるが、柔道部は開校の年から創部され、かつては何人でも入ってきたほど人気のある体育会系のクラブだった。札幌地区大会を勝ち抜いて全道大会に出場する部員も多く、個人でベスト8やベスト3に入賞するなど輝かしい戦績も残している。
 
 しかし、ここ数年は入部する生徒が激減、部の存続さえ危ぶまれている状況が続いている。監督の助川貢教諭(49)は、「どこの公立校でも同じだと思いますが、体育会系でも野球部やサッカー部、陸上部に入部する生徒が多いのに対して柔道部は敬遠される傾向にあります。新入生が入ってこない年もあって一時は廃部を考えたこともありました」と言う。
 
 現在の部員は、1年生の豊田直洋君と2年生の加藤光城君の2人。加藤君は入学当初は野球部に所属していたが、武道への興味が募って1年生の夏合宿から転部してきた。身長173cm、体重90㎏の恵まれた体を活かした練習の成果もあって、昨年11月の札幌地区新人戦男子90㎏級で勝利、1月28~29日に同立総合体育センターで行われる「第36回全国高等学校柔道選手権大会・北海道大会」(北海道柔道連盟などが主催)への出場権を獲得した。
 
「2人しかいませんから、平日の練習は近隣の高校での出稽古が中心です。外で練習することで対応力が身に付いたようで、加藤君の高いモチベーションとも相俟って入部1年足らずで実績を残しました」(助川監督)
 
 全道大会を前に加藤君が意気込みをこう語る。「筋力が取柄で相手を投げる時が気持ちいいですね。精神面で妥協したくないので良い結果が出せるようにしたい」。加藤君の得意技は豪快な一本背負投げだという。 
 全道大会の出場は叶わなかったもう1人の部員である豊田君は、身長168㎝、体重85㎏と加藤君に負けず劣らず重量級。「加藤先輩を見習って、今年こそ全道大会に出場したい」と決意している。ちなみに豊田君の得意技も一本背負投げだそうだ。
 
 札幌地区大会で勝ち残り、今回の全道大会に出場する公立校柔道部は男子90㎏級では稲雲高だけ。「加藤君の頑張りに期待していますが、加藤君の戦う姿が逆境に立たされている公立校柔道部の励みになればとても嬉しいですね」と助川監督は笑顔を見せていた。
(2014年1月27日記事一部修正)

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