安倍政権の日本再興戦略の一環として全国9ブロックで地域の戦略産業を強化していく方策を議論する地方産業競争力協議会の北海道版、『北海道産業競争力協議会』(事務局・道経済産業局、道庁)の初会合が21日、札幌市内の京王プラザホテルで開催された。協議会の委員は食、観光、医療、バイオなど産業界と経済団体、自治体首長から選ばれた16人。初顔合わせの意見交換の中で1人気を吐いたのが道経済連合会の近藤龍夫会長。「行き着くところは本気度。北海道は暢気だ」とイラダチを隠さない発言に委員たちが一瞬凍りつく場面があった。(写真は、京王プラザホテル札幌で開催された第1回北海道産業競争力協議会)
会場となったホールには委員を中心にオブザーバーの国出先機関や関係機関トップ、さらに随行者を含め100人近くが集まった。初会合ということで、委員長の山口佳三北大総長が発言を促し、各界を代表した委員が課題や解決策を提示、議論のプラットホーム作りに入った。
口火を切ったのが近藤会長。「議論の場がこれまでなかったのでありがたい」と協議会の設置を歓迎する発言から始まったものの、話すうちに次第に口調は変化、行政当局に批判の矛先が向かった。「オール北海道で食や観光を育成していかなければならないのは分かっているのに、行政当局は『カネがないからこの程度で』と収めてしまう。行き着くところは本気度。本気でやる気があるのか。輸出拡大にしても最初から活動資金の乏しい民間で体制を整備することもできない。産官学連携と言っても本気で連携していない。全体最適ではなく自分最適しか考えていない」と道経連などが進めている様々な施策が足踏み状態にあることに強い危機感を訴えた。
さらに、「北海道は四方を海に囲まれているせいか、全体的に暢気だ。四国の小さな県でも他県と競争して差別化するため多額の観光予算を使っている。北海道が危機にあることを道民は分かっていないし行政当局もそれを知らせていない」と委員として同席していた高橋はるみ知事の道政運営にも不満をぶつけた。
極めつけは、会合の終盤に示された『北海道経済の活性化に向けた提案』と題されたペーパーに対する近藤氏の対応。この提案は、全国知事会の席上、甘利明経済再生相が12月上旬に5兆円の経済対策表明したことを受けて、急遽協議会の名で国に要請することになったもの。
近藤氏は、「文言をもっと練らないとだめだ。提案は11項目に亘っているが詰め込んだ印象でメリハリがない。これでは(予算として)取るものも取れなくなるのではないか」と提案した知事に迫ったのだった。
道の経済成長をオール北海道で議論する場は、3年前にも北海道経済政策戦略会議があったが、この種の委員会ではメンバーが多すぎてまとまらないことや平均的な着地点を目指しがちなこと、さらに結果が総花的でキラリと光る一輪の花に目を閉じてしまうことなど“着眼大局、着手大局”で、結局は行政当局の通過儀礼的イベントと化していることは否めない。
そんな中で、今回の近藤会長のおそらくは自省を込めた発言は、協議会の雰囲気を一変させるショック療法になったようだ。「危機の時には、誰かが我慢して誰かを助けるような絞り込みが必要だ。そうでなければ、ビジョンなんて作れない」と近藤会長はピシャリと言い放っていた。
北海道産業競争力協議会は、今後年明けにも地域へのヒアリングを2回行い、3月には報告書をまとめる。
なお、北海道産業競争力協議会の設立趣旨や委員についての詳細はhttp://www.hkd.meti.go.jp/hokss/20131105/index.htm