ジャズの街・根室を代表するジャズ喫茶「サテンドール」(根室市大正町1-24)が、閉店を免れた。大地みらい信用金庫(本店・根室市)が、「駅前支店」の移転先ビル内(大正町1丁目32-3)に「サテンドール」を誘致、ジャズの灯が点り続けることになった。同信金の伊藤哲也理事長は、「ジャズ文化発信のお手伝いをしたい」と話している。
(写真は、大地みらい信用金庫・駅前支店とジャズ喫茶サテンドールが移転してくる旧「メガネのすずき根室本店ビル」)
根室はジャズの街として知られている。1965年、東京からUターンした5人が、ジャズを根室に広めたいとの想いから「ネムロ・ホット・ジャズ・クラブ」を結成したのがきっかけ。ジャズを聴き、語り合い、コンサートの企画やジャズ・ミュージシャンを招聘するなど、市民にジャズを届ける活動が始まった。世界的トランペッター日野皓正氏の伝説のライブが根室市旧公民館で行われ、そのライブレコード「ホールストーン」が制作されたほか、日野氏の弟でドラマーの故日野元彦氏の「流氷」、トロンボーン向井滋春氏の「ニムオロ・ネイナ」など、根室をテーマとした曲がコンサートの後に次々と制作され、ジャズの世界で根室は一躍、知名度が高まった。
その活動拠点となるジャズ喫茶「サテンドール」(デューク・エリントンのジャズ曲タイトル)がオープンしたのは、1978年12月。以降、ジャズ文化の発信拠点として営業を続けてきたが、2018年に創業店主の高齢化で一度、閉店した。市は、ジャズ文化を継承するため、地域おこし協力隊制度を使って店主を募集、東京の夫妻が選ばれて、閉店の危機を免れた。3年間の活動期間を終えたタイミングで創業店主の実弟が根室に戻り、店を継ぐことになって、ジャズ文化の灯は継承された。
(写真は、現在の大地みらい信用金庫・駅前支店とジャズ喫茶サテンドールが入っている建物)
それから3年、今度は、築50年以上となる建物の耐震問題が浮上。建物は、大地みらい信金の所有で、同金庫の「駅前支店」も入っている。同金庫は、近隣の商業施設集積地で、空き物件になっていた2階建ての旧「メガネのすずき根室本店」ビル跡への移転を決めた。これに伴って、同金庫は、「サテンドール」を移転先ビル内に誘致することも決めた。移転のための建物改修工事は、2025年11月中旬から始まった。改修工事の設計、監理は同金庫の本店建て替えを手掛けた大建設計(本社・東京都品川区)、施工は渡辺建設工業(同・根室市)。
新しい「駅前支店」は、1階に入り、中を仕切って出入り口を別にして「サテンドール」も入る。2階は、同金庫が利用する。「駅前支店」と「サテンドール」の移転は、2025年3月下旬となる。伊藤理事長は、「金融機関として地域のジャズ文化を醸成、発信するお手伝いをしたい」と話す。「サテンドール」にあるレコード約3千枚は、同金庫の所有となっており、スピーカーは、石垣雅敏市長の持ち物で、「店に置かせてもらっている」(石垣市長)という。市長もジャズ好きでピアノやウッドベースを奏で、自宅には、本格的スピーカーが4セットあるそう。「サテンドールの存続を一番喜んでいるのは、市長」という声もある。移転先の「サテンドール」では、ライブセッションなども計画されている。



































