キャリアバンク(本社・札幌市)やSATO社会保険労務士法人(本部・札幌市)などで構成されるSATOグループは『成長する管理職』(東洋経済新報社刊)などの著書がある北海道大学大学院経済学研究科松尾睦教授(49)を講師に招いたオープンセミナーを開いた。テーマは、著書名と同じ「成長する管理職」。国内の大手中堅12社、524人の管理職と面談調査した中から導き出された優れたマネジャーの成長の法則とはどういうものだったか。松尾教授の講演から抜粋する。(写真は講演する松尾睦教授=2013年9月18日午後、キャリアバンクセミナールーム)
松尾教授は調査から、ビジネスマンが成長するには「70:20:10」の比率があるという。70%は自分の仕事の経験、20%は他者から学ぶ=観察、10%は書籍や研修から学ぶこと。自分の経験こそが最大の成長エンジンという訳だが、優れたマネジャーは自分の具体的経験を振り返って教訓を引出し、次に活かす経験学習のサイクルが確立できているとする。
この経験学習モデルの成功者としてマネジャーではないものの、松尾教授が示したのはサッカー日本代表の本田圭祐選手。「彼は子供のころから練習した後に毎日欠かさず練習ノートを付けて“振り返り”を行い次に活かしていた。濃い10年と普通の10年の差は経験学習ができるかどうかにかかっている」と強調した。
マネジャーの経験学習の中で成長要因となっているのは「部門を超えた連携」、「変革に参加した経験」、「部下を育成した経験」の3つで、これにもともと持っている現状把握(情報分析力)や価値づくり(事業実行力)、目標共有力(巻き込み)の能力が絡み合ってマネジャーは成長していくと説明。
松尾教授は、「調査からわかったのは、優れたマネジャーたちは若いころから連携や変革の経験を積んでおり、課長や部長になってからも連携と変革に前向きに取り組んでいることだ。これは“経験の連鎖”と呼ばれるもので、人間の持つ経路依存性がプラスに発揮されている好例。だから、入社してから早い段階でこうした経験の連鎖が積めるような連携・変革の経験をすることが求められる」と語った。
講演後に参加者から「優れたマネジャーを育成するために新人時代に何をすれば良いか」と質問されると、松尾教授は「サントリーは新入社員に主体性と協調性の2つを徹底して鍛えている。チャレンジする主体性と繋がりを大切にする協調性で、早い話が自己と他者という組織人の基本軸を教えている」と具体例を示した。
また、「医療法人のような非営利組織で成長意欲、モチベーションを高める手法は何か」との問いに、「看護系などではどうしても専門職意識が強くなってしまうが、若いうちから部下の指導やチームリーダーに就けるなどしてマネジメントの面白さを感じさせることも一つの方法」と丁寧に答えていた。