道銀・兼間祐二頭取インタビュー「優先株全額償還への思い」「道民のATMで金融機関連携を」

金融

 ほくほくフィナンシャルグループ (本部・富山市)が、保有する優先株を2025年4月1日に全額償還した。北海道銀行(本店・札幌市中央区)が、経営危機に陥った1999年に取引先を中心に発行したもので、これによって、ほくほくFGは、名実ともに健全化を実現した。道銀の兼間祐二頭取(60)に、優先株発行時に道銀が置かれていた状況や、全額償還を果たした率直な思いなどを聞いた。合わせて、ほくほくFGが実行に移した第6期中期経営計画の中身と、今後の支店の在り方などを聞いた。(写真は、インタビューに応える道銀・兼間祐二頭取)

 ーーほくほくフィナンシャルグループ(FG)が、優先株を2025年4月1日に全額償還しましたが、発行当時は、どういうお立場でしたか。

 兼間 優先株は、1999年7月の発行ですが、私はその頃、本部から現場の営業店に異動していました。その2年前の1997年4月、北海道拓殖銀行との合併発表があって、私は、堰八さん(元頭取)の下で、経営企画室の一員として仕事をしていました。しかし、同年9月に合併延期が発表され、私は、現場に戻ることになって、1997年10月、南1条支店に、1999年4月からは、宮の沢支店次長に異動になりました。その頃の道銀は、大きな赤字決算を行い、自己資本比率が3%台まで低下、金融監督庁から早期是正措置を受けていました。
 当時、増資をするには、配当の高い優先株でなければ引き受けてもらえないのでは、という経営判断があったのだと思います。おそらく、幹事証券会社からも、そういうアドバイスを受けたのでしょう。

 ーー兼間さんは、優先株の引き受け先を探す側だったと思いますが、取引先の反応はいかがでしたか。

 兼間 中央のメガバンクなど金融筋では、2年前に拓銀株が、紙くずになっていたので、道銀が、配当の高い優先株を発行しても、そんなに多くを引き受けてくれないだろうという見方が強かったと聞いています。でも、実際には、「道銀頑張れ」という声が大半で、現場の私たちの受け止め方は、全く違っていました。

 ーー100億円が集まれば良い方だという声も多かった。

 兼間 東京方面では、100億円も集まらないのでは、という声が多かったと聞いています。私たちのように現場にいた行員の受け止めは、非常に大きな期待の中、ご協力いただいたと感じていました。中には、紙くずになるかもしれないという思いを持っていた方も、もちろんいたとは思いますが。

 ーー最終的に537億円が集まりました。

 兼間 率直に有難いと思いました。ただ、冷静に考えると、537億円を自己資本に加算しても、自己資本比率は、6%に届かないというのが分かっていました。私は、財務サイドの経験があるので、むしろこの先が大事だと見ていました。優先株の引き受けをお願いしていた当初は、公的資金に頼らず、地元の応援の下で再生したいという思いが、経営陣には強かったと思います。

 ーー当時は、公的資金制度が始まったばかりでした。

 兼間 優先株の発行で地元の応援を受けたことが、結果的に450億円の公的資金導入に繋がったと思います。堰八さんに聞くと、公的資金を受けないという思いで地元の方々に引き受けをお願いしたので、公的資金を受けることが決まってから、取引先からは、少し否定的な話もあったようです。とはいえ、お客さまから見れば、公的資金が入って自己資本比率が8%を超えるということは、逆に優先株が、しっかりと確実な自己資本とみていただけたと、前向きに捉えられたのではないかと思います。本店を中心とした札幌市内の取引先団体、ライラック会の皆さんには、一番応援していただきました。

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