全国の宝「夕張石炭坑道」、火災発生から7年ぶりに復活

社会・文化

 2019年4月18日の火災発生から閉鎖されていた「夕張市石炭物館」の模擬坑道の復旧工事が完了、2025年4月19日、7年ぶりに再開された。全国で唯一、誰でも入ることができる実際に使われていた炭鉱の坑道跡で、国の登録有形文化財にも指定されている。北海道だけでなく、日本の宝とも言える模擬坑道の復活は、夕張再生のシンボルになりそうだ。(写真は、7年ぶりに再開された模擬坑道)
(模擬坑道内では、実際の石炭層も見ることができる=写真右)

 この模擬坑道の正式名称は、「旧北炭夕張炭鉱模擬坑道」で全長180m、最深部の深さは地上から20m。100年以上前に実際の採炭のために掘られた坑道の一部で、使われなくなってからは、炭鉱職員の新人教育や救護隊の訓練などに利用されてきた。1980年に開館した「夕張市石炭博物館」の主要施設として一般開放が始まった。2018年にリニューアルを行ったが、それから1年後の2019年4月18日深夜に火災が発生。直ぐ近くの士幌加別川から注水するなどして同年5月3日に注水を停止、同年5月13日に鎮火の判断となった。

(写真は、鉄柱カッペと呼ばれる採炭の様子を再現したコーナー)

 市は、模擬坑道が復旧できるかどうかを判断するため、排水の河川放出や排水後の被害状況の把握、坑道の測量や地質調査を行ったうえで、有識者委員の意見を聞き、文化庁の支援を受けて、火災発生から3年後の2022年4月から復旧工事を開始した。それから3年、2025年2月14日に、復旧工事、電気備工事、消火設備工事の全てを完了した。

(写真は、挨拶する厚谷司・夕張市長)

 模擬坑道の再開にあたり、この日、同博物館1階のBANホールで、市と同博物館の指定管理者であるNPO法人炭鉱の記憶推進事業団の主催で記念式典が行われ、関係者ら約50人が出席した。夕張市の厚谷司市長は、「模擬坑道火災からの復旧は、夕張市の歴史と重なるものがある。本市は、全国で唯一の財政再生団体だが、2007年に解消すべき赤字額だった約353億円も確実に解消し続け、向こう2年間で実質赤字をゼロにする財政再建完了のゴールが間近になっている。開基以来、幾多の栄枯盛衰を乗り越えてきた夕張は、この火災と復旧も一つの教訓として、地域再生の弾みにしなければならない。これからも市民一人ひとりの力を集めることによって、石炭のように小さくでも力強く輝く夕張を目指していきたい」と挨拶した。

(写真は、祝辞を述べる鈴木直道・北海道知事)

 また、東京都職員から転じて2011年4月から2019年2月まで夕張市長を務め、同年4月に北海道知事に当選した鈴木直道知事は、「市長時代の2018年、石炭博物館をリニューアルする時、財政再生団体の中で制約があったが、夕張の過去と現在、未来を発信していくうえでこの施設は極めて重要と、故吉岡宏高館長(当時)の指導をいただき、空知管内の炭鉱遺産の発信拠点として再出発をした。その大きなコンテンツが模擬坑道だった。火災は、関係者にとって大変大きな衝撃があったと思う。再開によって、より多くの方々に夕張の過去、現在、これから挑戦を知っていただき、夕張の新しい一歩に向けた支援の輪が広がればと願う」と話した。

「夕張市石炭博物館」の入館料は、大人(中学生以上)1200円、小学生400円。11月上旬から4月下旬までの冬期間は休館。9月まで10時~17時、10月以降10時~16時。会館期間の休館日は火曜日。

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