「釧路製作所」橋梁、鋼製タンクの蓄積技術で宇宙ビジネスに挑戦

経済総合

 雄別炭礦全額出資の関連会社として、1956年に創業した釧路製作所(本社・釧路市)。炭鉱機械や鉄道車両の点検・補修事業から始まり、現在は、橋梁事業、コンビナートの石油タンクの製缶事業など、鋼構造物の製作・施工を行っている。公共事業縮小の動きの中、蓄積された技術力を生かして事業の多角化を進めており、新規事業の中には、さまざまな可能性が期待される宇宙関連産業もある。(写真は羽刕洋社長)
(写真は、経済産業省の北海道近代化産業遺産に認定され、誰もが自由に見学できることでも人気の同社シンボル、SL8722号)

 釧路製作所の事業所敷地内に展示されているSL「8722」。同社のシンボルで、経済産業省の北海道近代化産業遺産にも認定されている雄別炭礦鉄道を走っていたSLだ。同社の当初の事業は、雄別炭山~釧路間を石炭や従業員らを運んだ、このSLや坑内で活用する工作機械などの整備が主な仕事だった。現在、「日本最東端の橋梁メーカー」と呼ばれている同社だが、橋梁事業に乗り出したのは、1963年頃から。「当時の経営陣や技術者の方々が、雄別炭礦だけの事業では不安だったことや、これからは公共事業にも参入すべきだろう、という考えがあって橋梁事業に参入したのだと思います」と羽刕洋(うしゅう ひろし)社長は話す。

 橋梁事業の参入には、それまで同社が手掛けていた船舶整備のノウハウも役立った。「旧釧路川に艀(はしけ)があって、そこで船舶の整備も行っていました。船を整備する技術と橋を造る技術は、親和性があります。それで当時、橋梁もいける、といった判断になったのでは、と推測しています」(羽刕社長、以下同)

 橋梁製造に参入して技術を磨き、その後は、鋼製タンクなども手掛けるようになったが、橋梁の主な施工実績には、地元釧路の久寿里橋や釧路新道の鶴野跨道橋、根室の温根沼大橋がある。また、2024年12月の釧路西IC(インターチェンジ)開通で地域交通の利便性が大きく向上した道東自動車道では、Cランプ橋、Dランプ橋を手掛けた。札幌の北1条・宮の沢通に建つ北海道神宮「一の鳥居」や、同市白石区の菊水円形歩道橋も同社施工によるものだ。

(写真は、同社が施工した道東自動車道・釧路西ICのDランプ橋)

 鋼製橋梁の公共事業は、1990年にピークを迎えた。この頃の発注量は、全国でおよそ90万トン。それ以降は、小泉純一郎政権の構造改革や民主党政権の公共事業削減なども影響して、市場規模は急速に縮小。2023年度の鋼製橋梁発注量は、14万トン弱にまで落ち込んでいる。「橋だけでは生きていけない」ーーそんな危機感が、新規事業の創出・育成を目指す多角化のアクションへと結び付いていった。

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