イオン北海道(本社・札幌市白石区)が、西友(同・東京都武蔵野市)の北海道事業を承継して、札幌市内9店舗を順次、「イオン」や「マックスバリュ」「ザ・ビッグ」に改装して、オープンさせている。西友の従業員を含めて、スムーズな承継の背景には、合併統合を繰り返してきたイオンのDNAが、生きている。2025年2月期の中間決算の中身を含め、西友承継による経営への効果などについて、青栁英樹社長(63)にインタビューした。(写真は、インタビューに答えるイオン北海道・青栁英樹社長)
ーー西友の承継では、合併・統合を繰り返してきたイオンのDNAが生きていたのでは。
青栁 イオンの歴史は、吸収合併や統合の歴史です。そこに貫かれているDNAは、小嶋千鶴子さん(ジャスコ創設者、イオングループ名誉会長・岡田卓也氏の実姉)が唱えた「心と心の合併」です。資本と資本、上と下の合併ではなく、心が一つにならないと、うまくいかないという考えです。イオン北海道が、ダイエーの北海道事業を承継した時も、当時のダイエー店舗にある近隣のイオン店舗が、パートナー店舗になって対応しました。当時、ダイエーは、イオングループに入っていたので、システムや用語の統一は、事前に共有できていました。しかし、今回の西友承継は、閉店した9月末までは独立した会社だったので、事前に準備ができない状況でした。
10月1日から短期間のうちに、店舗の活性化や仕組みを変え、考え方も共有できるようにしなければなりませんでした。そのためには、既存のイオン店舗の人たちの力を借りて、一緒になって対応しないと間に合いません。ダイエー承継時と同様に、「パートナー店舗」をいち早く導入して、相談ごとや困りごとを一緒に解決していきました。「西友西町店」のパートナー店舗は、「イオン札幌琴似店」でしたが、「札幌琴似店」は、元々ダイエーの店舗です。彼らも、教えられた経験があり、今度は教える側になりました。まさにDNAが、引き継がれていることになります。
2024年4月に、西友9店舗の承継を発表した時、当然ですが、西友の従業員の皆さんには知らされていませんでした。当社も、幹部数人だけしか知らなかった。発表を聞いて、西友の人たちの驚きと不安は大きかったと思います。それで、「これからも一緒に仕事をしましょう」とビデオメッセージを作成して、西友の従業員の皆さんに見てもらいました。実は、私自身も1999年に、信州ジャスコに勤めている時、ジャスコに吸収合併されることになって、同様の気持ちを抱きました。自分の体験から、いち早くメッセージを出すことが大切だと思い、何度も撮り直してビデオメッセージをつくりました。
ーー承継はスムーズに進みました。
青栁 やらなければならないことは、分かっていました。イオン北海道も、旧マックスバリュ北海道も、何回も経験していることですから。当社の従業員たちは転籍、合併を経験してきたので、相手の気持ちを分かっています。だから、なおさらやりやすい風土がありました。西友の皆さんのほとんどが10月まで残ってくれ、イオン北海道に転籍してくれました。10月に入って、旧西友のある店長から、「あのビデオメッセージがあったので、みんなの不安が収まり、頑張る気になれました」とお礼を言われました。