北海道から撤退を進めている「イトーヨーカドー」。全6店舗のうち現在までに4店舗を閉店、年明けには残り2店舗を閉店して、北海道から姿を消す。そんなヨーカドーが地域に残した爪痕は、企業と地方自治体の信頼関係に関わるものだ。(写真は、旧「イトーヨーカドー北見店」)
小売業の大型店舗は、地域住民の生活に密接に関係する。とりわけ北海道のように市町村が広域分散しているところでは、大型店舗は、生活インフラそのもの。それだけに、ヨーカドーの存在感は大きかった。しかし、昭和から平成、令和へと時代が進み、その存在感は、徐々に低下していった。
そんな中での撤退は、企業の経営事情から仕方のない側面はある。閉店日に多くの人たちが、別れを惜しむ光景が繰り広げられるのは、ヨーカドーの企業姿勢が受け入れられていたことの証左でもある。しかし、こうした優等企業らしからぬ爪痕を残しているのも、また事実である。それは、道内の北見市や函館市、札幌市などと締結した連携協定を反故にしていることだ。まちづくりや特産品づくりに協力することを謳っているが、さる道東の市には、撤退後も何の音沙汰もないという。
行政との協定は、双方の信頼関係があってこそのもの。撤退に関わる諸手続きに忙殺されていたとしても、協定をそのままにして撤退する中途半端な企業姿勢は、ヨーカドーの企業文化とは相いれないはず。小売りの優等生だったヨーカドーらしくない爪痕は、ヨーカドーの今を端的に示しているのかもしれない。協定を締結した自治体との信頼関係に、暗い影を投げかけている。