調整局面に入ったとは言え「アベノミクス」による景気回復期待が持続する中、札幌市内の不動産業界が注目するのがオフィスビルや賃貸マンションなどのREIT(不動産投資信託)取引が増えてきたことだ。その中でも、久々の大型物件として55億円で取引されたのが同市北区のSE山京ビル(北7条西1丁目)。取得したのはジャパンエクセレント投資法人。札幌駅北口の不動産価格上昇に弾みがつくと期待感が高まっている。(写真は、55億円で取引されたSE山京ビル)
REITは、賃貸収入や売却益を投資家に分配する投資商品。オフィスビルや賃貸マンション、ホテルなどの不動産を投資法人が取得して専門の運用会社に資産運用を委託して運用益を投資家に配当する仕組み。
札幌市内では全国と同様にリーマンショック後にREIT取引は止まっていたが昨年夏以降に徐々に動き始め、11月以降を見ると北広島市の倉庫を含め、ホテル、賃貸マンション、オフィスビルなど5件の事例があった。
とりわけ不動産業界で注目されているのが、今年3月に売買されたSE山京ビルの事例だ。同ビルは、1989年3月に竣工、今年で築24年を迎える。敷地面積2675㎡、地下3階地上13階で延床面積は2万3644㎡。売主は合同会社ポレールで買ったのはジャパンエクセレント投資法人。取得額は55億円で「せいぜい40億円程度と見ていたが、この金額にはびっくりした。久々の大型物件と言って良いだろう」(市内の不動産関係者)という声が多い。
これだけの価格が付いたのは、このビルに特殊な要因があることも影響したようだ。同ビルの地下1階から3階には第三セクターの札幌エネルギー供給公社の熱製造設備があり、ここから専用の導管で周辺約10ヵ所のビルや商業施設等に熱供給を行っている。こうしたインフラを抱えていることも取引価格に反映されたようだ。
ジャパンエクセレント投資法人は、新日鉄興和不動産や第一生命、積水ハウスなどが出資するジャパンエクセレントアセットマネジメントに資産運用を委託している。同ビルの年間純収益約4億円と見られ還元利回りは6%という。
「札幌中心部の土地、建物の資産価値はリーマンショック以降下落していたが、ここにきて不動産価格はプラスに転じ始めた。今後も強含みで推移するだろう」と市内の不動産関係者。中心部のREIT取引は続きそうだ。