マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の2023年の16回目は、中央区南7条西4丁目の「キングムー」。(写真は、解体の足場が組み立てられ始めた「キングムー」)
札幌ススキノのバブル遺産とも言える、異形の外観を持つ建物がいよいよ取り壊される。白いフェンスが建物の周囲に据えられ、足場が組み立てられ始めている。来年春には、跡形もなく更地になる。「キングムー」は、バブル期の1991年に北開観光(本社・札幌市中央区)がオープンさせたディスコ。奇抜な外観デザインが人気を集め、札幌のディスコ・クラブシーンを駆け抜けていった。所有者が変わり、2008年頃まで営業が続いたが、その後、閉鎖された。
2014年になって三新(同・東京都台東区)が土地建物を取得、同社は2016年4月30日に、テーマパーク型ダンスクラブ「KING∞XMHU」として再オープンさせた。しかし、2023年5月27日に営業を終了、再オープンから7年間で延べ100万人が来店したこの店舗は、再びシャッターを下ろした。
再開はあるのか、注目を集めたが、三新から土地建物を取得した日本エスコン(東京本社・東京都港区)は、今年10月17日から建物内部の解体を開始した。解体業者はビケンワーク(本社・登別市)の釧路支社(釧路市)とシンヨウ(札幌市厚別区)。内部の解体から2ヵ月、いよいよ外壁を含めた建物全体の解体工事が始まる。工事期間は2024年3月31日まで。日本エスコンは、隣接する「ススキノラブホテル3」も同時に解体しており、跡地には、ホテルの建設が予定されている。バブル遺産でありながらに文化遺産の価値も含んだ「キングムー」が、間もなく消える。