小泉内閣時代に経済財政相などを歴任した竹中平蔵慶応大グローバルセキュリティ研究所長は7日、札幌市内で講演し次期日銀総裁に就く見通しの黒田東彦アジア開発銀行総裁など正副総裁人事を「大変良い人事」としたうえで、「政府は7月の参院選前に長期的な財政政策のシナリオを提示するべき」と語った。また、安倍首相3本目の矢に当たる成長戦略について「農業改革」と「空港、道路、上下水道などの運営民営化」など経済の景色が変わる成長戦略が必要とした。(写真は、講演する竹中平蔵氏=7日午後、京王プラザホテル札幌で)
竹中氏は、道内の経営者らで作る異業種交流組織、『一への会』が主催する「2013北海道ニューフロンティア経営セミナー」の講師として来札し講演した。
次期日銀総裁に就く見通しの黒田氏について「大変良い人事」として30年前に竹中氏が旧大蔵省研究所の主任研究員だったころのエピソードを紹介。「黒田さんは主税局の企画官だったが、研究所に良く遊びに来て『竹中さん、何か面白い論文はないか』と言って私が紹介するとコピーして持ち帰っていた。大蔵官僚としては珍しく経済学を勉強している人だと感心した」と語った。
また、安倍首相が掲げるアベノミクス2本目の財政政策について前半の矢は10兆円補正予算で放たれたが、後半の長期的財政収支の黒字化についての矢はまだ放たれていないと指摘。「このシナリオをいつ示すか、そしてそれをちゃんとやるかどうかで国債の信用度は変わってくる」と述べ、「歳出カットや増税は避けられない。自民党内には参院選後に先送りする動きもあるが、安っぽい政治判断をせず参院選の前にシナリオを示し、『そのためにも早期にデフレを克服して行こう』という姿勢を国民に提示した方が良い」と強調した。
さらに3本目の成長戦略について、過去7年間に毎年成長戦略が作られいずれも失敗していることを示し「今までと同じでは意味がない。経済の景色が変わる成長戦略が必要。官民ファンドをたくさん作って官僚がコミットしたら従来と同じことになってしまう」と警鐘を鳴らした。
竹中氏は農業改革と官の施設を民間に運用を任せるコンセッション方式の二つがポイントと語り、「農業の規制緩和で株式会社の参入を容易にし、農産物輸出を積極化していくべき。今のままなら日本農業は淘汰される。また、コンセッション方式で空港、道路、上下水道の運営を民間に開放すれば様々な民の知恵と活力が出てくる。これらを安倍内閣が本気でできるかどうかが成長戦略の要」と訴えた。