移ろいゆく街角の風景④「エンタメの聖地、札幌・南3条西1丁目」

社会・文化

 街角の風景は、建物や店舗、行き交う人たちによって形づくられる。普段はあまり意識しない街角の風景は建物、店舗の存在が大きな役割を果たし、私たちの印象に残って記憶に刻み込まれる。建物や店舗が新しく生まれ変わると、街角の風景も変わり、私たちの記憶も変わる。そんな移ろいゆく街角の風景を追ってみた。(写真は、東急不動産が事務所・店舗の新ビルを建設する旧ディノス札幌中央ビル跡地=仲通り側から撮影)

 札幌市中央区南3条西1丁目。今は更地になっているが、時代を遡ればここに札幌劇場があった。1917年、歌舞伎やオペラ、サーカス、ジャズライブなどの公演を行う劇場として誕生したのが札幌劇場。戦後、1948年には松竹の封切館として再スタートを切った。スガイディノスの前身である須貝興行が同劇場を運営してきたが、1968年、ここに地下2階、地上8階建ての映画、ゲーム、ボウリングなどが楽しめる一大娯楽ビル旧札幌須貝ビル(その後、ディノス札幌中央ビルに改称)が新たに生まれた。

 スガイディノスは2001年以降、ゲオやRIZAPグループに入るなどM&Aの荒波に晒される。それに連れて、ディノス札幌中央ビルの土地建物所有権は目まぐるしく動き、2019年には全国でゴルフ場やホテルを運営するクラシック(本社・大阪府大東市)の所有に変わった。その頃、スガイディノスは、北海道の独立資本の運営に切り替わり、ようやく地場資本による地域密着経営に戻ったものの、クラシックは建物老朽化を理由にディノス札幌中央ビルを閉鎖、解体。2021年1月にはタイムズ南3西1第2として時間貸し駐車場の運用が始まった。

 その敷地を2022年2月に取得したのが、東急不動産(本社・東京都渋谷区)。時間貸し駐車場は同年7月31日で閉鎖され、今度はここに東急不動産が事務所と店舗からなる新ビルを建設する。敷地面積約407坪(1345・51㎡)、建築面積約294坪(971・43㎡)、鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造の地下1階、地上13階建て、延べ床面積約4226坪(1万3948・19㎡)、建物の高さ55・90m。設計、監理はエイチツー・プランニング(東京都港区)、施工は未定。着工は2023年1月頃を予定している。

 札幌のエンタメ発祥の地だった南3条西1丁目の土地は、東急不動産によって新たな命が吹き込まれる。そんな動きが進む中、新生スタートして早々のスガイディノスは、コロナ禍の直撃を受け経営破綻、2022年9月末に東京のエンタメ企業が事業を承継する。エンタメ発祥の地がその役割を終えるのと軌を一にして、スガイの灯も消えることになった。

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