札幌市東区北10条東4丁目5-1で1926年(昭和元年)から営業を続けてきた銭湯「北光湯」が、3月27日で廃業した。ボイラーの老朽化や利用客の減少で事業継続が、難しくなったことが原因。東区に残る地名「北光」(ほっこう)の名を冠した95年の歴史を持つ銭湯が、時代の流れに振り落とされた。(写真は、3月27日で廃業した「北光湯」)
(写真は、「北光湯」のボイラー)
「北光湯」を開業したのは、現経営者、岩渕睦雄さん(67)の祖父。元々は宮大工の棟梁をしていたという祖父は、昭和元年に自ら母屋を建て、それに付随して銭湯を開いた。この地区は、当時の国鉄線の北東側に当たるため「鉄東」(てっとう)と呼ばれていたが、銭湯名はさらに北側の地名「北光」を使っている。睦雄さんの義兄で、リタイア後に銭湯経営に携わるようになった首藤俊英さん(70)は、「『鉄東』地区なのになぜ『北光』の名前を使ったのかは分からない」と言う。
開業当時の周辺は、国鉄職員の社宅や戸建て住宅が多くあって、銭湯の利用客もこうした鉄道関係者が多かった。しかし、時代とともに社宅は減り、跡地には商業施設やマンションが増え始める。利用客は徐々に減少していき、最近では新しい客は来ず、常連客が1人減り、2人減りという状況だった。
銭湯の建物は、40年ほど前に建て替え、ボイラーも15年ほど前に新しくした。しかし、このボイラーも更新時期を迎え、故障が目立つようになってきた。「新しいボイラーに切り替えるには1000万円以上の投資が必要。投資回収は難しいため、ここが潮時と判断して廃業を決めた」と首藤さん。最終日の数日前から感謝の気持ちを伝えるため、入浴料金を無料にして利用客を迎えた。27日の最終営業日には、初めてのお客が多く訪れて混み合ったという。
廃業した「北光湯」の土地の広さは約300坪。既に売買が進行しており、開業当時の姿を残している母屋とともに間もなく解体が始まる。その先の歴史はどんなふうに始まるのか。