北海道の若手経営者を育てる第6期「北海道経営未来塾」(塾長・長内順一未来経営研究所社長)は3月8日、札幌市中央区のロイトン札幌2階ハイネスホールで「経営実務講座(北海道銀行主催)」を開催した。塾生35人が国土交通省北海道開発局の橋本幸局長と道銀の兼間祐二頭取の講演に耳を傾けた。
(写真は、講演する橋本幸・北海道開発局長=上と兼間祐二・道銀頭取)
橋本局長は、「『北海道開発』という政策」と題して講演。北海道開発法に基づく北海道総合開発計画の政策決定プロセスなどについて講演、「北海道総合開発計画などは、閣議決定される前に与党プロセス(与党審査)がある。自民党政調や総務会をくぐらないと閣議に進めないことが55年体制の頃から不文律化している。したがって世の中を変えていくための政策をどう立案するかは、我々行政組織に対するアプローチもあるが、政治の世界へのアプローチもある」と述べた。
北海道開発について、「国策で北海道開発をしているため、国の課題解決につながるような開発でなければならない。食料自給率の向上やインバウンド観光の振興は、今後も大きな柱になるだろう」と話した上で、「北海道は、ある意味で地方の生産力があるから食べていける。しかし、地方では急激に人口が減少している。人口減少局面で全国的にはコンパクトシティ政策を採用しているが、北海道ではコンパクトシティ政策は難しい。地方に住み続けられる環境を維持しなければ北海道の生産空間も維持できない」と話した。最後に、「食、観光、エネルギーが次の北海道の開発政策のポイントになってくる。若手経営者の皆さんと一緒により良い北海道をつくっていきたい」と締めくくった。
橋本局長は、塾生の質問に答える形で2030年度の北海道新幹線札幌延伸について、「夏季五輪なら2030年8月に間に合えばいいが、冬季五輪なら1月開催となる。このままでは新幹線延伸が微妙に1年、間に合わない。冬季五輪札幌開催が決まった後、国策でダイナミックな意思決定ができる機運になることを期待するとともに、掘削土の検査データ提供など全力でお手伝いしたい。また、ニセコはスキー会場になる可能性があるので、最低でも倶知安まで2030年に開通させるため一生懸命取り組みたい」と述べた。
兼間頭取は、「地方銀行を取り巻く環境」をテーマに講演したが、最初にウクライナ問題に言及。「ロシア国債がデフォルトになる可能性もあり、リーマンショック級の事態に備える準備をしておかなくてはならない。停戦になってもロシアへの制裁は解除されないため、停戦後に起きてくる問題がどれだけ世界に影響を及ぼすかを留意しなければいけない」と話した。道銀は地銀の中で唯一ロシアと取り引きをしているが、「地域商社の北海道総合商事がシベリアで進めていた植物工場プロジェクトは昨年終わっており、幸い大きな影響は出ない。目下、ユジノサハリンスクとウラジオストクにある駐在事務所職員の帰国を指示している。6日に帰国できる予定だったが実現しなかった。情報収集を強めて最短のタイミングで安全に帰国させる準備を進めている」と述べた。
続いて、地銀を取り巻く環境について話を進め、地方の人口減少に伴う地域経済の縮小が大きな課題になっていることを指摘。「北海道には地方に20の信用金庫と7つの信用組合がある。信金に関しては多すぎるという議論があるが、地方に行けば金融機関は地域の信金しかないのが実態。地銀、信金、信組が互いに競争して体力を奪っていくようなことをしていていいのかというのが、私の大きな問題意識。これからの地域金融の在り方は、一緒に手を組んで協調するところは協調していくことだと考えている。互いに役割分担をしっかりやりながら、地域の金融を維持していくことを考えたい」と延べ、4月からスタートする次期中期計画に盛り込んでいくことを示していた。