北海道各地には、多くのスーパーやホームセンター、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどがあるが、そこだけにしかないという変わり種の店舗もある。各地の「変わり種店舗」を取り上げる第2回目は、札幌市清田区平岡8条4丁目のコンビニエンスストア「パルム(PALM)平岡8条店」。(写真は、「パルム平岡8条店」)
(ヤシの木をモチーフにしたロゴマークが今も自動ドアに残る=写真)
この店舗は、北海道で2店舗しか残っていないとされる「パルム」の看板を掲げる小売店の一つ。「パルム」と聞いても、ピンとこない道民が大半だろう。2000年代初めに解散した北海道だけのコンビニチェーンを知る人は少ない。コンビニチェーンには、フランチャイズとボランタリーがあって、一般的なコンビニは本部に加盟料を払い、経営指導を受けるフランチャイズ方式。一方、ボランタリー方式は、店舗名が同じでもオーナーの経営自由度が高く加盟料も必要ない。
「パルム」が生まれたのは、1994年頃。フランチャイズのコンビニを経営していたオーナーたちが、当時の北酒連の協力を得て立ち上げた北海道独自のボランタリーコンビニチェーンだ。「パルム平岡8条店」の前身は「サンクス」。オーナーは脱退組約25人と「パルム」を立ち上げ、店舗を転換した。「セイコーマート」に続く道内コンビニとして注目された。
2000年頃に、オーナーは店舗を現経営者である山下正弘さん(63、フードショップ平岡・代表取締役)に承継する。しかし、「パルム」は大手コンビニやスーパーとの競争で劣後、2006年には解散してしまう。その時点で、コンビニ「パルム」は、それぞれ個人商店に戻った。山下さんは、その後も屋号として「パルム」を使い続けている。現在は、一般小売をほとんど行わず、酒や飲料、パンなどの配達をメイン事業にしている。
「『パルム』が生まれた当時は、許可事業の酒店やたばこ店がたくさん残っていました。彼らの生き残る受け皿の一つに『パルム』があった。しかし、今や酒店やたばこ店はほとんど残っていない。『パルム』を生み出した熱気は今や過去のものですよ」と山下さんは言う。「パルム」の看板を掲げ続けてきたことで、思わぬ出会いも生まれている。「釧路で『パルム』を経営していた人が、懐かしそうに訪ねてきてくれたこともありました。また、北海道をツーリングしている本州の人が、『北海道で希少のコンビニ』と寄ってくれたこともありました」と山下さん。
「パルム」の誕生から30年近くが経って往時の姿はないが、山下さんは当分の間、「パルム」の看板を掲げ続けるつもりだ。