北海道大学(寶金清博総長)の敷地内薬局誘致問題が迷走している。これまで運営事業候補者としていたメディカルシステムネットワーク(本社・札幌市中央区)の子会社、なの花北海道(同・同)に加え、3月10日にアインホールディングス(HD、同・同市白石区)も追加で運営事業候補者に選定すると開示したからだ。(写真は、北海道大学正門)
北大は、敷地内薬局誘致に伴う公募型プロポーザルを18年7月3日に公募公告し、異例の2年間の審査を経て20年7月29日に手を挙げた4社からメディカルシステムネットワーク(本社札幌)の子会社、なの花北海道(同)を運営事業候補者に選定した。ところが、なの花北海道が選定されると、学内外で“なの花ありき”の出来レース疑惑が浮上。総額8億円の寄付や北大が指定する場所に13億円をかけて留学生宿舎を建設することなど、公募公告の前に知らなければ提案できないような内容が評価されて選定される決め手になったからだ。他大学では一般的な応募各社の評価点数も開示されず、最も高い点数だったとされる別の応募者が選ばれなかったことも出来レース疑惑を色濃くした。
こうした声を無視できず、北大は寶金清博氏が新総長に就任した昨年10月に、敷地内薬局問題の内部調査を開始。それ以降、北大は沈黙を続けてきたが、半年後の3月10日、唐突に北大ホームページ上で、『保険調剤薬局選定・運営のための敷地貸与に係る運営事業候補者の選定について』と題したお知らせを掲載した。
そこには、内部調査の結果について《選定手続き、プロセス等については法令違反、学内規則違反はなかった》《公募前の段階で「株式会社なの花北海道」が留学生宿舎の提案を行っていることの疑念が一部報道等で指摘されたが、既に一般公表されていた本学関係資料等により、同社の判断で行ったものであり、不審な点はなかったことが確認された》ーーとした。
その上で、寶金新体制の発足や内部調査で相当期間が経過したことによってコロナ禍がさらに拡大、医療を取り巻く状況が変化したことにより、感染対策のためにも複数の運営事業候補者を選定することが適当として、新たにアインHDを追加選定したとその理由を示している。公募公告では、複数の運営事業者を選定することがあるとしていることも追加選定の理由に掲げた。
北大は、なの花北海道選定に問題はなかったと確認したとしている。それならば、なの花北海道1社にするのが発注者の責任ではないか。また、コロナ禍による環境変化を理由に2社とすることは、途中でルールを変えることに繋がり公募公告の信頼性を損なうものだ。
北大が想定している敷地内薬局の貸与面積は限られており、2社が薬局を開設するようなスペースはない。仮に2社の薬局となれば根本から貸与する敷地のスペースを増やさなければならず、プロポーザルの前提条件も崩れてしまう。2社をさらに1社に絞り込むとなれば今まで以上の透明性が必要だ。北大の苦し紛れの2社選定は、この問題をさらに複雑にしてしまう導火線になり兼ねない。