今年4月末、コロナの影響を受けて閉店したライブハウス「COLONY(コロニー)」(札幌市中央区南7条西4丁目)の元店長が、北海道のエンターテインメントをサポートするために新しいライブハウスの立ち上げを進めている。(写真は、新しいライブハウス「PLANT」を計画している小野寺司典さん)
元店長は、小野寺司典(つかのり)さん(45)。「コロニー」が誕生した19年前にこのライブハウスのコンセプトを仲間とともにつくってきた実質的な創業者だ。大小のライブハウスがあるススキノで広さ70坪、収容人数180人の「コロニー」は、出演者と一緒に活動する踏み込んだ運営方法が他のライブハウスとの差別化に繋がり、「サカナクション」など多くのアーティストを輩出してきた。しかし、今年に入ってからコロナの影響でライブ演奏ができなくなり、4月末で閉店を余儀なくされた。
小野寺さんは、19年間でライブハウスを巡る環境が大きく変化してきたことを実感している。当初はメジャーデビューすることが目標のバンドやソロ活動家がほとんどだったが、今ではネットやYouTubeの普及でメジャーデビューよりもYouTubeの再生回数を増やすことが目標のバンドも目立つようになってきたからだ。
さらに、ライブハウスを訪れるお客の変化も感じている。それは、ライブハウスを心の拠り所にしているお客が多くなってきたこと。「コミュニケーションが苦手な若者が多くなっている中で、同じ趣味を持つ人同士の交流の場になっている」と小野寺さんは言う。
小野寺さんは「コロニー」閉店を逆手にとり、こうした環境変化を受けて今の時代に必要とされるライブハウスの立ち上げを目指すことにした。コンセプトは、アーティストとファンがエンタメを共創していく場づくりだ。
すでに「プラントエンターテインメント」(札幌市南区)を設立、新しいライブハウスの名称を「PLANT」と決め、旧コロニーのスタッフら約10人と場所の選定に入っている。7月後半からはクラウドファンディング(CF)も開始、8月23日までの期間中に400万円の資金募集を目標にしている。サカナクションの山口一郎さんなどアーティストやレーベル約70組が協力、コラボTシャツやコラボアルバム、ライブハウス利用権などのリターンも用意している。
小野寺さんは20代の頃、トム・クルーズの映画『カクテル』に触発されて仲間5人でススキノにカクテルバーを開店。その後、一時は電気工事士として働いたこともあるが再びススキノに戻り、クラブでDJを務めた。クラブが休みの日にはそこをロックライブの演奏会場にするなどして人脈を広げてきた。やがてクラブが閉店することになり仲間とともに「コロニー」を開店した経緯がある。ちなみに「コロニー」も今度の「PLANT」も、ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」から引用している。
「新しいライブハウスでは、最新の音響機材を揃えるといったことではなく、出演者とお客が楽しめる環境、育っていける環境をつくることに重点を置きたい」と小野寺さん。年内に開店のめどをつけ、来年のグランドオープンを目指している。