札幌市と財団法人さっぽろ産業振興財団の主催による札幌市経済界フォーラムが25日、京王プラザホテル札幌で行われた。「経済のグローバル化と地域の生き方」を副題に山口二郎北大大学院法学研究科教授が基調講演、その後「北海道・札幌のブランド力をどう活かすか!」をテーマに横山清アークス社長、上田文雄札幌市長を交えたパネルディスカッションがあった。食や観光で優位性のある北海道・札幌を成長させるための方策や観光客を呼び込む知恵などについて議論が白熱した。(写真は、札幌市経済界フォーラムで行われたパネルディスカッション)
基調講演で山口氏は、グローバル時代の地域づくりについて、「地域が考えるべき自立と自律があるが、経済的な自立よりも思考の自律が大事。自律に必要なのは地方が生きていく意欲と構え、戦略をもっているかということ」と述べ、北海道新幹線の札幌延伸が動き始めたときに、並行在来線問題で大混乱したことを例にあげ、「北方領土と北海道新幹線には似通った問題があるのではないか。つまり具体的なシミュレーションをしていないことだ」と自律が不足していることを訴えた。
そのうえで山口氏は、「『できない』を前提とするのではなく、『できるかもしれない』とアイデアを深めて能動的に動くことからダイナミズムが生まれてくる。荒唐無稽と思われるくらいのアイデアを練っておくことが必要だ」と結論付けた。
パネルディスカッションでは、上田市長が札幌への一極集中問題に触れ、「札幌市政にも道政にも『北海道のために札幌は何ができるか』という視点がなかった。札幌は北海道のためにどう貢献するかを意識した上で北海道における一極集中を考えていかなければならない」と語った。
また、食に関して高付加価値化を進めるフードコンプレックス国際戦略総合特区の指定を受けたことで、「例えば十勝の農産物を札幌で加工するなど道内で連携して価値の高いものに手を加えていく契機になる」(上田市長)と期待感を示した。
横山氏は、「道内には食に関する良い商品があるが、年間1~2億円のような規模ではなかなか外には売っていけない。我々は食品スーパーでホールディング(持ち株会社)を作って規模を大きくしたが、これは生き延びていくためにどうするかを考えた結果だ。1~2億円の会社でも50くらい集まれば広域で商売ができるようになる。良いもの、美味しいものを事業として成り立たせるような方法論を編み出していかないといけない」と事業化に向けたヒントを提言した。
観光について、山口氏は「大学もツーリズムに取り組むべき。欧米の大学ではサマースクールとして4~5日間のプログラムを組んで寮をツアー客に開放しているケースもある。様々な仕掛けをすれば人は集まってくる」と提案。
北海道日本ハムファイターズやコンサドーレ札幌といったスポーツ・ツーリズムの可能性にも討論が進み、上田市長は「日ハムで札幌の存在感は高まった。日ハムのようにファンを大事にする姿勢は新鮮に移った。そこが一夜にして巨人ファンから日ハムファンに市民や道民が変わった原因だろう。ファンを大事にするというビジネスモデルはいろんなところで応用できる。商業者もファンをどう増やすかの参考になる」とした。
北海道・札幌のブランド力をどう高めていくかについては、「ゴールを設定して知恵を出す。札幌は日本のリヨンやバルセロナを目指してマチ作りを進めるべき」(山口氏)、「思いついたら何でもやる。良い会社に入って良い思いをする時代は終わった。いろんな制約があっても具体的に動くこと」(横山氏)、「感動を共有できるマチにしたい。人とのネットワークを深めていけばチャレンジや心豊かになり経済にも必ず通じる。リヨンはユネスコの創造都市に指定されているが、札幌もリヨンのようにユネスコの指定を受ける準備をする」(上田市長)とそれぞれから意見が出ていた。
パネルディスカッションのコーディネーターは、林美香子慶応大大学院システムデザインマネジメント研究科特任教授が務めた。