2012年は、アークスが設立されてから10年目に当たる。同社は昨年、北東北のユニバースや網走の篠原商店を統合、年商4000億円を超え食品スーパーの新しい経営モデルとして全国的な注目を集めることになった。合併、統合を積み重ねていく中で、理念や情熱というココロの統合がともすれば置き忘れられてしまうが、アークスの強みはこうした“情的資本”の統合も果たしている点だ。
横山清社長がアークスの今年のスローガンとして掲げるのは『創!新連帯 時空を超えて豊かな地域社会づくりに貢献する。』――今年はどんな再編劇を仕掛けていくのか。(写真は、今年のスローガンを背にする横山清社長)
横山社長は、統合で最も大事なことは、鮮度だという。鮮度とは商品や品揃えのことを指しているのではない。企業にとって最も大事な鮮度とは、社員の情熱・やる気のこと。つまり企業体としての鮮度が旬の時期を過ぎていれば、いくら経営統合をしてもその企業は活性化しないと断言する。
一昨年に統合した東光ストア(旧札幌東急ストア)は、アークス入りした後にこれまでと見違えるような鮮度を取り戻した。統合当初は、旧東急のカラーとアークスのカラーが正反対だったためお互いに足を引っ張る相殺効果が出るのではないかと見られていたが、東急系列から離れ、独立経営体としてアークスグループ各社と切磋琢磨する中で企業体の鮮度が復活。横山社長も驚くほどの逆バネが出てきているという。
企業体としての鮮度を保っているか、磨けば鮮度を取り戻せるのか、磨いても取り戻せないのかという見究めが統合の成否を決めることになる。
横山社長が認めた今年のアークスのスローガンは、『創!新連帯 時空を超えて豊かな地域社会づくりに貢献する。』――その意味するところは何か。
「アークスグループ各社の時間も空間もどんどん拡がっているが、経営理念を同じくする多様な人材が間断なくイノベーションに挑戦し、これを実現しなければ歴史的大転換期を迎えている現在を生き抜いてはいけない。鍵になるのは、全員参加の経営を実現すること。これこそがグループ力による成長の原動力となる」と言う。
続けて、「数値目標も大切だが、一体感と熱意が競争を勝ち抜くエンジンであり、ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源のほかに『情熱』、『感情』など、ココロの重視が組織に新しい価値を創り出す。情的資本(エモーショナルキャピタル)を追求する積極的交流を進めることが不可欠」とスローガンを掲げた理由を説明。
過去、大手が主導した流通再編の多くが挫折した中で、アークスが進める新しい再編の形が価格競争と低成長下の中でマッチしていることは確かだ。
以前、横山社長に「政治家のような考えがあるのでは」と統合の極意について質問したところ、「政治家ではなく思想家の考えだよ」と返されたことがある。今年のスローガンとともに、4000億円超えを果たした横山社長の思想力の伸び代に注目が集まる年になるだろう。