札幌証券取引所は7日、上場会社コンプライアンス・フォーラムを開催した。東証自主規制法人「東証CMLEC」の主催によるもで、今年が4回目。オリンパスや大王製紙などコンプライアンスが厳しく問われている中、道内の株式公開会社の担当者など約80人が出席、最近のインサイダー取引事例や防止対策が紹介された。(写真は講演する証券取引等監視委員会の松井英隆事務局次長)
最初に証券取引等監視委員会事務局の松井英隆次長が「インサイダー取引に対する当局の取り組み」をテーマに講演。インサイダーの対象になるのは上場会社等の役職員のほか会社関係者から重要事実の伝達を受けた家族や同僚、さらにその家族や同僚から情報を得た2次受領者であっても共謀があれば規制対象になるとし、2005年の証券取引法改正でインサイダー規制違反に課徴金制度が導入されたが基本は5年以下の懲役、500万円以下の罰金を科す刑事罰であることを強調した。
証券取引等監視委員会は職員数704人で市場取引を監視、そのうちの70人は国内外を跨ぐボーダー取引を監視しており、国内外を経由した代表的摘発事例として09年にシンガポール当局と協力によって立件したジェイ・ブリッジの元会長による株売却事件を紹介した。
松井氏は「インサイダー取引は必ず発覚する」としてあるインサイダー摘発事件による調査報告書を紹介。そこにはこう書かれている。《元社員は証券取引等監視委員会の調査力に舌を巻いた。そこまで調査能力が高いと知っていたならインサイダー取引を行うことはなかったと述べ、借名取引であっても証券取引等監視委員会の調査能力からすればインサイダー取引は必ず発覚することを周知徹底することが肝要である》
続いて東証COMLECセンター長の保坂武志氏が「インサイダー取引の最近の事例と社内教育」と題して講演。日糧製パンとの山崎製パンの資本業務提携を知った山崎製パンの取引先役員が日糧株を取得したケースや西友の社外取締役の女性が夫にウォルマートのTOB(公開買い付け)情報をして夫が西友株を買い付けた例、また同僚からMBO(経営陣による株買収)情報を聞いた公認会計士が当該株を知人名義で取引し、会計士が氏名公表と懲戒処分を受けた事件などを紹介した。
フォーラムでは北浜法律事務所・外国法共同事業の弁護士三木亨氏が「法律・判例から考えるインサイダー取引防止体制」、東証自主規制法人上場管理部長長谷川光洋氏による「上場会社におけるコンプライアンス―市場が求める企業行動の規準―」をテーマにした講演も行われた。