東日本大震災からまもなく半年、道内の観光地にもようやく旅行者が戻ってきた。7~8月の宿泊客数は前年並みか前年をクリアするホテルが多く、海外からの入り込みを除き道外や道内観光客は回復しつつある。こうした回復基調に乗ってさらに北海道観光をパワーアップさせるためには何が必要なのか。北海道じゃらんの中西基王編集長は、「道民一人ひとりが地元に愛着を持ち、生き生きと過ごすことが旅行者を惹きつける」と、道民がそれぞれのエリアで元気になることが大切と強調した。(写真は、北海道じゃらん中西編集長)
日本人は年平均で2~3回旅行することが統計で分かっているが、旅行者の指向は、大型バス1台で周遊する「40人1色」の時代から「10人10色」、さらに現在では「1人10色」へと、旅行ニーズは多様化、細分化している。
中西氏は、「旅行者は地元の人が楽しんでいるものを体験したり、『私のために』と感じることで感動し満足する。ストーリーを旅行者に伝えていくことが大事」と言う。
北海道観光の満足度は、じゃらんの調査によると全国4位で87%の旅行者が満足して帰っている。しかし、道外からの来訪意識が高いのに、来訪者数は下がり続けているという。満足度が高いというものの、真の満足度が得られているのか、心の底からファンになったのか――というと、実はそうではない。
「旅行者が『地元の人のスピリッツを感じた』という場面は少ない。ホスピタリティのアップと地元の人たちが『いいな』と思っている観光素材を再認識していくことが、心の底からファンになってくれる旅行者を増やすことに結びつく」と中西氏は言う。
例えば、函館ならあまり知られていないものの、旅行者の興味が高いと思われる観光素材としてクリスマスファンタジーや男爵黒豚、ナイトクルーズなどあるという。地元の興味関心は高いが観光客にはあまり知られていないゾーンに位置する観光素材こそ宝というわけだ。
観光とは光を観ることだが、光とは何か。「それは地元の人たちが自分たちのエリアを愛し生き生きとしている姿だ」と中西氏は指摘する。東日本震災があって元気のあるエリア、元気のある人に会いたいというニーズが高まっている。住民一人ひとりが地元に愛着を持ち、ホスピタリティを発揮して来訪者の満足度を高めることによってリピートに繋がっていく。満足度をアップさせる=ファンづくりに他ならない。
ちなみに、じゃらんの調査でホスピタリティ1位は沖縄、2位は宮崎、北海道は11位だそう。
中西氏はネット時代の観光について、「道民一人ひとりが地元と消費者を結ぶ情報発信者になれる。地元でアピールしたいことと消費者の興味・関心をチューニングして伝えていくこと、チューニングしたものを地元に広げることに取り組んで欲しい」と語っていた。
(8月末に札幌グランドホテルで開かれた観光業界モチベーションアップセミナーでの中西氏の講演から抜粋)