北海道の若手経営者を国内外を代表するトップ経営者に育成することを目的にした「北海道経営未来塾」(塾長・長内順一元ニトリ特別顧問)の今年度4回目の公開講座が12日、札幌市中央区のホテルモントレエーデルホフ札幌で開催された。講師は、モスフードサービスの櫻田厚会長(66)。『モスのこころ 食を通じて人を幸せにする』をテーマにした講演の後半を掲載する。(写真は、講演するモスフードサービス・櫻田厚会長)
櫻田氏は、1990年38歳の時、台湾にモスバーガーの店舗網を構築するため赴く。合弁会社を設立して翌91年2月に1号店がオープン、順調に事業は進むかに見えた。10ヵ月後、現地の従業員たちから食事に誘われる。行ってみると従業員たちは一様に怖い顔。通訳も訳しづらそうにしている。やがて通訳は、『櫻田さんには愛情を感じない、とみんなが言っている』と。『どうして』と桜田氏が聞くと、『台湾のことを少しも知ろうとしない。あなたはやがて日本に帰るかもしれないが、私たちは命を懸けて働いている。もっと台湾に寄り添ってもらいたい』。
「それを聞いて即座にみんなに謝った。翌日から通訳を外して言葉を覚えるため、現地の日本人とは付き合わないこと、NHKは見ないことなど、日本語が使えない環境に身を置くことにした。最初は、バスやタクシーの乗り降りもままならず、仕事に関しても従業員から教わるしかなかった。それでも1年ほど経つと日常会話ができるまでになった」
言葉が通じだすと心も通い合うようになり、櫻田氏は、台湾の合弁会社を世界一素敵な会社にしようと励むようになる。3年後に給料を倍にすると宣言するなど、日本に帰る気はなかった。やがて櫻田氏は叔父の急逝など事情が重なって帰国することになったが、台湾のモスは現在、株式を上場、店舗数は260店舗とマクドナルド330店舗と互角の勝負をするまでに成長している。