低価格食品スーパー「卸売スーパー」を札幌市内などで8店舗展開している津司(本社・札幌市東区)。手稲区前田4条7丁目にある「現金問屋手稲店」をこのほどリニューアル、同社が考える新しい食品スーパー(SM=スーパーマーケット)の方向性を示した。津司耕太郎社長(68)にSMの現状と今後について直撃した。(写真は、リニューアルした現金問屋手稲店)
「近いうちに食品スーパーは単独ではやっていけなくなるだろう。家電量販店や衣料専門店、ホームセンターなどとの複合化が一つの方向だ。市場には肉、魚、青果などの生鮮食品が集まりづらくなっている。道内の水産物の多くが中国に輸出されているほか、青果は市場を通さない産地直送が増えて、市場に十分な量が入ってこなくなっているためだ。当社では東京から魚を引っ張ってくることも考えている」
「現金問屋手稲店のコンセプトはワンダーランド、遊園地だ。いずれこういう時代が来ると思ってリニューアルした。これからは、こういう店しか残らなくなっていく。要は、買い物客が楽しく買い回りできる店ということだ」
「値段はそれほどの訴求力を持たなくなった。買い物客も値段の違いをあまり認識しなくなっている気がする。周りの店と値段で喧嘩しようなんて全く思っていない。うちはうちだから。これが安い、あれが安いという次元の競争は終わった」
「今、主婦が買い物をするのは週に1回になっている。以前は週に数回買い物に行く主婦が多かったが、年々買い物の頻度は下がっている。夫婦揃って週に1回買い物をして冷蔵庫にしまい込むパターンだ。週に1回ということは、買いだめをするということ。買いだめができないようなSMはなくなってしまうだろう。普段の買い物は、セブンーイレブンとドラッグストアで十分ということだ」
「セブンーイレブンは弁当でも何でも美味しい。高齢者がそれに満足したらSMに行かなくなる。弁当などの配達も始めているが、あれは我々にとって脅威だ。週1回の買いだめができるSMでなければ生き残れないだろう」
「欲しいものを買いたいのが買い物客だ。だから欲しいものが揃っている店に行きたいんだ。単に肉や魚をたくさん買いたいわけではない。自分の買いたいものが揃っていれば、『あそこは品揃えが豊富だ』という声になる。ところが自分の買いたいものがないと『品揃えが良くない』という声になる。品数ではない。買い物客が欲しいものを揃えるのが大切だ。そういう意味で、現金問屋手稲店は買い物客にとってストライクゾーンがいっぱいある。買いたいものが買いたい値段で揃っているから『品揃えが豊富だ』という声に繋がる」
「これからのSMで、仕入れ力の弱いところは厳しくなるだろう。資金力があるとかないではなく、仕入れる力が弱かったらこの競争の中で続かない。仕入れ力を持っているところだけが残る。今、食品スーパーで好調なのはラルズだと見ている。決して悪くない、無茶をせずしっかり儲けているのではないか」(終わり)