札幌証券取引所の第5代理事長に小池善明理事長(65)が就任して2ヵ月、その舵取りに注目が集まっている。苫東に進出している企業などにも就任挨拶を終え、“小池カラー”を出す準備も整ってきたようだ。札証活性化には、道内経営者たちの上場意欲と札証の環境整備が両輪になることが不可欠。小池理事長に見通しを聞いた。(写真は小池善明理事長)
――理事長の役割のひとつに札証を道内外の経済界に浸透させること、つまり札証の知名度を高めることがあると思う。
小池 IRや直接金融の啓蒙、証券会社の理解を得るなど、札証の情報発信が大事だと考えている。私の大きな役割のひとつに“札証の広告塔になる”ということがある。あちこちで直接金融の重要性や活性化についてお話をして企業の皆様に関心を持ってもらうようにする。そのうえで、中堅企業や有望な会社に上場を目指していただく。
――道内企業の上場意欲は、それほど高くないのでは。むしろ、非公開で株価に左右されない経営を指向する経営者が増えている面もある。
小池 潜在的に上場を目指している経営者は多いと聞いている。道内には、したたかで上場意欲の強い経営者は減っていないと思う。ただ、現状の証券市場では株価が低くなってしまい、初値が資産価格を割ってしまうのではないか――そういうことを見ているのであって、景気状況が好転したら上場会社は結構出てくると思っている。
――上場会社の株式だけを取り引きする市場では魅力が薄いのでは。
小池 株式の上場は大事だが、企業の株式だけを取り引きする方向から東証や大証のように上場している商品の数を増やすことに力を入れている証取は多い。札証も単一企業の株式を扱う市場からもう少し商品の幅を広げたい。その筆頭は、上場投資信託(ETF)。
――しかし、様々な規制をクリアしなければならない。実現の見通しはあるのか。
小池 札証が活性化を議論するために設置している資本市場会議では様々な案が出ている。検討している案を実現するには規制が問題になる、という声も良く聞くが、私は規制よりも担い手が出てくるかどうかの方が重要だと思っている。『これは良いからやってみよう』という担い手、つまり『やってみよう』という企業なり証券会社なりベンチャーキャピタルが登場してこないと始まらない。
そういう担い手が現れてきたら、理事長として規制や障害になることを取り除くことが仕事になる。プレーヤーが現れないことにはいくらグラウンドを整備しても試合は始まりません。
――他市場との連携についてどう考えるか。
小池 東証や大証とは日常の業務の中で情報交換やセミナーなども共催しており、さらに踏み込んで提携などの形を作ることは考えていない。むしろ、規模が似ていて、私たちと同様の悩みを抱えている福岡証取との結びつきを強めたい。例えば、相互上場のよう に福証に上場したら札証に上場したとみなすようなことも考えたい。
また、ラオスやベトナムにも証取が誕生すると聞いているが、上場数が10~20社程度のところとは国内、海外にこだわらず連携、交流を進めたいと考えている。