北洋銀行は、北海道大学との包括連携事業の一環として今年度から2年間、市民医療セミナーを開く。北大病院地域健康社会研究部門と同大大学院医学研究科がん予防内科学講座などから講師を派遣、最先端の医学研究情報を分かりやすく解説する。
第1回は、24日北洋大通センター4階のセミナーホールで同行の医療総合アドバイザーに就任した浅香正博同講座特任教授を講師に開かれ、約70人が参加した。次回は6月15日、同所で同じく浅香教授が「胃の病気とピロリ菌」をテーマに講演する。(写真は、講演する浅香氏)
24日の講演テーマは、「日本の医療の現状について」。日本の医療は欧米に比べて「レベルが高くて、安くて、アクセスがフリー」(浅香氏)と優位性を強調、「患者さんは医師を賢く使っていくことが大切」と述べた。
米国では公的保険制度がなく民間保険のみで市場経済型医療制度のために4600万人が保険に加入しておらず、年間4万人が医師にかかれず死亡している現状を紹介。富裕層には手厚い医療が施されるが、個室入院費は1日15万円かかるという。
また、英国は係り付けの医師を通さないと二次医療に進めず、「係り付け医師の予約を取るのに数週間、二次医療を受けるには数ヵ月もかかる。このため二次医療に掛かれないがん患者が死亡したり、お金のある人は他の国で治療を受けている」と紹介した。
日本の医療は1時間待って3分の治療だが、「大学病院でも紹介状なしで即刻見てもらえるのは日本のみ。入院しても北大病院の個室は1日1万円、網走の厚生病院ならさらに広くて7000円。東京では10万円や3万円かかる場合もある。日本の中でも北海道はさらに恵まれている」と語った。
浅香教授は、一人前の医師が誕生するまでに10年近くかかることや医師のサラリーマン化が進み地方より都会、勤務医より都会で無床の開業医、専門医や博士号を取らずにパートで診察を行う傾向に拍車が掛かっている――など地域医療を守るための懸念を示した。
小泉改革以来続いている医療費削減は、日本の急性期医療の崩壊を招き、「日本の優れている『高い医療レベル』『ローコスト』『フリーアクセス』のどれかを失う可能性がある。最悪のシナリオはそれらが全部崩壊することだ」と医療行政に警鐘を鳴らした。
市民医療セミナーは、今年度5回開催の予定で、セミナーのコーディネート役でもある浅香教授は、「ピロリ菌や腰痛の話題だけでなく、リクエストに応えてテーマを設定するので、例えば糖尿病や認知症のことでもどんどん要望して欲しい」と呼びかけていた。
なお、今年度の内容は以下の通り。
6月15日「胃の病気とピロリ菌」
7月13日「腰痛の原因と治療」
10月26日「漢方薬は本当に効くのか」
1月20日「胃がんと大腸がんの予防」
定員120人。参加申し込みは北洋銀行法人部((011・261・2579)