2010年から札幌ドーム社長を務めた長沼修氏(73)が6月30日に社長を退任するが、23日北海道新聞朝刊のエッセー「朝の食卓」に掲載された長沼社長自身の思いが反響を呼んでいる。(写真は、札幌ドーム)
「さようなら札幌ドーム」と題した500字ほどの文章だが、後半は新球場建設を進めようとする北海道日本ハムファイターズへの牽制球のようなトーン。札幌ドームの社長だから日ハムを引き留めたい思いは当然だが、長沼氏自身の生の声を知った読者は多いのではないだろうか。
長沼氏は、北海道放送の社長、会長を経て2010年6月にドーム社長に就任した。JR北海道取締役、旧札幌駅地下街開発社長を経て2代目社長に就いた瀬戸武氏の後任だった。
2年程前、長沼氏は帰宅途中に路上で倒れ、運よく通りかかった空(から)の救急車の隊員に見つけられて九死に一生を得たことがあったという。体調を理由に昨年、ドーム社長交代を市に相談したそうだが、市は日ハムへの歯止め役として続投を要望した経緯があった。中立公正な長沼采配は、市にとって最適なトップであり、日ハムにとっては手ごわい存在だったようだ。
ともあれ、日ハムは昨年新球場建設に舵を切った。エッセーで長沼氏は「自分の家を持ちたいことは当然」と理解を示しつつも「札幌は年間累積5mもの積雪がある特殊な地域だ。ここで民間のドーム球場を運営するのはとてもコストがかかり大変だと思う」と指摘。そのうえで「夢は夢として描き続けながら……札幌ドームを本拠地に末永く北海道のチームとして愛されてほしいと思う」と結んでいる。
日ハムは、北広島市、札幌市と新球場建設の協議を進めている。後戻りできないにしても長沼社長の率直な思いは多くの道民、日ハムファンの声を代弁しているのではないか。「さようなら札幌ドーム」のタイトルには、「さようなら日ハム」の意も込められていたのだろうか。