札幌信用金庫(本店・札幌市中央区)は17日、新本店ビル落成記念を兼ねた経済講演会を札幌市中央区の東京ドームホテル札幌で開催した。講師は、東京新聞・中日新聞論説副主幹で読売テレビ系列『そこまで言って委員会』でお馴染みのジャーナリスト・長谷川幸洋氏。取引先や預金者など約700人が参加、長谷川氏のユーモア溢れる語り口に聞き入った。(写真は、講演する長谷川幸洋氏)
長谷川氏は、『激動する世界―日本の針路を考える』をテーマに1時間30分の持ち時間をフルで使い切った。長谷川氏はまず、日本を語る場合に世界の情勢を抜きには語れないとして、現在の世界最大のリスクは米大統領候補トランプ氏だと指摘。トランプ氏は日本の駐留米軍の費用を全額出すべきと主張しているが、トランプ氏が登場する前から米国弱体化による米軍撤収があるかも知れないと安倍政権は考えていた。それが、安保法制見直しに結び付いたと説明。「米軍が撤収するかもしれないため、米国抱き込み作戦のひとつとして安保法制を見直した」と述べた。
仮にトランプ大統領が誕生しても、「強い米国は復活しないだろう。貿易障壁で自国産業を守ろうとしても、今や米国のみで自国経済は回っていかない。弱体化はますます加速するだろう」と話した。
長谷川氏は、世界にトランプ現象が広がっており、来年のフランス大統領選でルペン氏が勝利する可能性が強くなっていること、6月のイギリスEU離脱国民投票など、すべては国境の壁を高くする方向に向かっているとしたうえで、伊勢志摩サミットでも「中国問題、ロシア問題など各国の不協和音をオブラートで包んだものになり外交政策の不一致は隠せないだろう」と述べた。
そんな中、日本の立ち居振る舞いはどうあるべきか。「私の答えは、日本は単独では難局に対処できないということ。日本は米国やベトナム、フィリピン、インドなど仲良しの友達をたくさん作って中国、北朝鮮に対抗するしかない」と結論付けた。
世界経済について、「金融と財政のテコ入れをせざるを得ない状況で、ドイツのメルケル首相に財政出動で『うん』と言わすためにも日本は増税できない」との見方を示し、「2017年4月の消費増税はない」と言い切った。7月の衆参ダブル選も、「熊本地震の余震が収まらず被災者の生活を考えればできない」とこちらも断言。
「中国の経済は大崩壊が始まっており、爆買いや日本への投資は引いていくだろう。日本は補正予算で景気刺激をしても焼け石に水」と経済の先行きに黄信号を点していた。