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 ひとつの政策を実行したことで自治体首長がお礼の電報を受け取ることはそうそうないだろう。北海道の高橋はるみ知事は昨年10月、廃止も視野に入っていた道営競馬の存続を決めたことで、日高管内の町長会から電報を受け取った。


 政策に関して電報を受けたのは高橋知事も初めてのことだという。(写真は高橋はるみ知事)
 電報を受け取った高橋知事が、喜んだのには二つの理由がある。ひとつは地元が喜びを電報という手段で伝えてくれたことが単純に嬉しかったこと。
 もうひとつは、支庁制度改革で距離が開いた日高管内首長たちと高橋知事との溝が埋まったからだ。
 支庁制度改革によって、日高支庁は日高振興局に変わり、総合振興局よりも事実上格下げになった。将来的には胆振総合振興局への統合も予測されるだけに支庁がある浦河町など管内6町の反発は大きかった。
支庁制度改革によって、同じく振興局になった檜山とともに、高橋知事にとって「檜山」「日高」は鬼門にさえ位置づけられるようになっていた。
 とりわけ、道営競馬の本拠地である日高は、道営競馬そのものの存続が危ぶまれていた時期で、「日高」との緊張感は頂点に達していた。
 道営競馬は赤字続き。単年度赤字のピークは2001年の28億円だが、それ以降も黒字転換が進まず、道は08年3月に道競馬改革ビジョンを示して経費削減や開催競馬場を門別一本に絞り込むなど手を尽くしたが、09年度も約3億円の赤字に陥り存続か廃止か――知事の決断が注目されていた。
 昨年10月、知事は存続で腹を決めた。10月16日から開催される第3定例道議会での表明というスケジュールで進んでいたが、知事与党の道議会自民党・道民会議会派の重鎮で高橋知事の理解者でもあった神戸典臣道議(6期、胆振管内選出)の働きかけで、本会議の10日前、10月6日の道議会予算特別委員会で存続の表明を前倒しした。
 日高管内6町長らは道議会予算特別委員会が開かれる前に、高橋知事に直接陳情する場面もあったが、その時点で腹を固めていた知事は焦らし作戦で陳情を受けるだけに留め置いた。
 数日後、満を持しての存続表明は、日高の高橋道政に対する立ち位置を「アンチ」から「シンパ」に変える効果もあったようだ。
 その日に届いた電報に知事も大いに喜んだという。
 軽種馬産地、日高では昨秋に行われたせり市、オータムセールで見学に来ていた中国人が飛び入り参加で馬をせり落とした。その代金が入ってくるかどうか心配された面もあったが、無事3回に分けて振り込まれたという。
 今年に入って1月末にはモンゴル自治政府が調教前のサラブレッド2歳馬16頭や競走馬の上がり馬4頭、ポニー4頭、種牡馬2頭の計26頭を約8000万円で購入したほか北京の馬主グループも9頭を購入した。
 中国では日本のような勝ち馬投票券を一般人が買えるような競馬はないが、レース参加者に賞金が出る競馬は開催されているという。馬主が社会的なステータスということもあって、今後も日高産軽種馬の中国需要は続きそう。
 道営競馬の存続が多くの波及効果を生むことは間違いないようだ。


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